極限への昂進
戦争とは何か
篇: 第一篇
極限への昂進は、手加減を美徳とする発想を危険な思い込みとして退け、力の行使が歯止めなく極限まで高まっていく論理を説く節。
『戦争論』のどこにあるか(篇と章)
第一篇第一章「戦争とは何か」第3節。
原語と原文
「Da der Gebrauch der physischen Gewalt...die Mitwirkung der Intelligenz auf keine Weise ausschließt, so muß der, welcher sich dieser Gewalt rücksichtslos...bedient, ein Übergewicht bekommen, wenn der Gegner es nicht tut...so steigern sich beide bis zum äußersten」(物理的な力の行使は……知性の働きをまったく排除しない。それゆえ、この力を容赦なく用いる者は、相手がそうしなければ優位に立つ。……こうして両者は極限にまで高まっていく)。
クラウゼヴィッツの言っていること
原文は、まず「傷を少なくしつつ相手を武装解除する巧みなやり方こそ戦争術の本来の目指すところだ」という「人情に厚い者」の考えを、危険な思い込みとして退ける。そのうえで、力の行使を控える側がいれば、控えない側がそのぶん優位に立つため、双方が優位を求めて力の行使を強め合い、理屈のうえでは歯止めなく極限にまで高まっていく、という戦争に内在する昂進の論理を説く。
研究者の間で読みが割れるところ
この「極限への昂進」という理屈上の帰結が、実際の戦争でもそのまま起こるものとして述べられているのか、あくまで純粋な概念としての出発点であり、後段で政治的な事情による歯止めが説かれることを見越した対比のための議論なのかは、研究者の間でも読み方が分かれる。
よくある引用とのずれ
この節が「戦争では手加減せず徹底的に戦うべきだ」という行動指針として引かれることがあるが、原文はむしろ力の行使を控えることを危険な思い込みだと述べたうえで、双方が優位を求め合えば歯止めなく極限まで高まっていくという、力の行使そのものに内在する論理を示しているのであって、それを望ましいことだと勧めているわけではない。