絶対戦争と現実の戦争

戦争とは何か

篇: 第八篇

絶対戦争と現実の戦争は、理屈のうえで際限なく激しさを増していく「絶対戦争」という考え方と、実際に起きる制約された戦争とを分けて論じる章。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第八篇「戦争計画について」第二章「絶対戦争と現実の戦争」。

原語と原文

「wenn wir nicht gerade in unseren Tagen den wirklichen Krieg in dieser absoluten Vollkommenheit hätten auftreten sehen」(もし私たちが、まさに今の時代に、現実の戦争がこの絶対的な完全さのうちに現れるのを目にしていなかったなら)。

クラウゼヴィッツの言っていること

原文は、暴力の応酬が理屈のうえで際限なく高まっていく「絶対戦争」という考え方を示したうえで、実際の戦争の多くはそこまで激しくならず、政治的な事情や手段の制約によって途中で止まると述べる。そのうえで、ナポレオン戦争の時代には絶対戦争に近い姿が現実に現れたとし、自分たちの生きた時代をその数少ない実例として挙げている。

研究者の間で読みが割れるところ

「絶対戦争」を、実際には起こりえない理屈のうえだけの限界の型として読むか、ナポレオン戦争のように現実にも近づきうる傾向として読むかは、研究者の間で見方が分かれる。未完のまま遺された草稿のどの段階の記述かによって力点が違って見えるとも指摘されており、どちらが最終的な考えだったかは確かめきれない。

よくある引用とのずれ

「絶対戦争」が、20世紀に使われるようになった「総力戦」という言葉とほぼ同じ意味だとして紹介されることがあるが、原文が述べているのは、暴力の応酬が理屈のうえで際限なく高まっていく、という論理上の型のことであり、国家総動員という具体的な戦争のやり方を指して作られた言葉ではない。