重心

攻撃と防御

篇: 第八篇

重心は、敵の力と動きが集まる中心を見きわめ、そこに力を集中させよと説く、もっとも広く知られる語の一つ。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第八篇「戦争計画について」第四章「戦争目的のより詳しい規定 敵の打倒」。

原語と原文

「Aus ihnen wird sich ein gewisser Schwerpunkt, ein Zentrum der Kraft und Bewegung bilden, von welchem das Ganze abhängt, und auf diesen Schwerpunkt des Gegners muß der gesammelte Stoß aller Kräfte gerichtet sein.」(それらから、ある種の重心、すなわち全体がそこに懸かっている力と動きの中心が形づくられる。そして、あらゆる力を集めた打撃は、この敵の重心に向けられなければならない)。

クラウゼヴィッツの言っていること

原文は、敵の軍や国家を成り立たせているさまざまな要素の中から、全体の力と動きが集まってくる一点、すなわち重心を見きわめることの大切さを説く。そのうえで、味方が持てる力を分散させず、この重心に向けて集中して打撃を加えることで、敵全体を大きく揺るがすことができると述べる。

研究者の間で読みが割れるところ

重心が常に一つに絞り込める単一の点なのか、複数存在しうるのか、また国家や同盟のように複雑な相手の場合にどう見きわめるのかは、原文の記述だけでは確かめきれず、研究者の間でも説明が分かれる。現代の軍事ドクトリンが重心をあらかじめ定められた手順で一つに特定すべき対象として扱う扱い方についても、原文の趣旨との隔たりを指摘する研究がある。

よくある引用とのずれ

現代の軍事ドクトリンでは、重心をあらかじめ定められた手順で分析し一つに絞り込むべき対象として扱うことがあるが、原文はむしろ、その都度の状況に応じて力と動きの集まる先を見きわめるという、文脈に応じた判断の働きとして重心を説いている。