国土内への退却

攻撃と防御

篇: 第六篇

国土内への退却は、あえて戦わずに自国の奥深くまで退くことで攻め込む側の力をすり減らすという、広い国土ならではの防御の型を説く章。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第六篇第二十五章「国土内への退却」。1812年のナポレオンのロシア遠征を主な例として挙げる。

原語と原文

「Fünfundzwanzigstes Kapitel: Rückzug in das Innere des Landes」(第二十五章 国土内への退却)。

クラウゼヴィッツの言っていること

この章でクラウゼヴィッツは、広大な国土を持つ国が決戦を避けて自国の奥深くまで退くことで、攻め込む側に守備隊の配置・補給線の延伸・行軍の消耗という負担を重ねさせ、時間の経過とともに攻める側の力を弱らせるという退却の型を説く。1812年のナポレオンのロシア遠征を、この型が現実に働いた例として挙げている。

研究者の間で読みが割れるところ

この型が、ロシアという国土の広さや気候といった特有の条件に強く依存する例外的な話なのか、もっと広く当てはめられる一般原則として述べられているのかは、研究者の間で見方が分かれる。クラウゼヴィッツ自身が1812年の遠征に従軍した経験を持つことが、この章の記述にどこまで影響しているかも確かめきれない。

よくある引用とのずれ

「広い国土を持つ側は退却するだけで勝てる」という一般論として広まることがあるが、原文はロシアという特有の広さと気候を伴う例を挙げているのであって、退却そのものが常に有効な戦い方だと述べているわけではない。