読まない判断

読む前に決める

途中でやめる・最初から読まないと決める見切り方

どんな技?

読む前に、目的に照らして読む章と飛ばす章を分けます。あわせて「10分読んで拾えるものが無ければ閉じる」のような、やめる線を先に決めておきます。最後まで読む前提を外すだけの話で、本の良し悪しの判定ではありません。開かない章を決めるのも同じ判断なので、目次の段階でほとんど済みます。決めた線は書き留めておくと、迷ったときに戻れます。

なぜ効くのか

時間が限られた読者は、得られるものが減った時点で先へ飛ぶという行動を取ることが実測されています。ただしどう見切ると得かを比べた研究は見当たらないので、これは効き目の話ではなく時間の配り方の話です。飛ばした箇所が手元に残らないことは拾い読みと変わらず、空いた時間のぶんだけ抜けができます。拾えなかった中身は、別の資料で埋めるしかありません。

やり方

先に読む目的を決めるを済ませ、目次で必要な章に印をつけます。印の外は開かず、印の中を10分読んで、拾えた中身を書き出します。書けるものが無ければそこで閉じ、何が足りなかったかを一行だけ残します。別の資料に移るかどうかも、閉じたその場で決めてしまえば持ち越しになりません。印は目次のページに直接つけ、読む前に数だけ数えておきます。

はまりどころ

この見切り方が良い結果につながるかは、実験で比べられていません。読みやすい本だけを残すとわかった気が増えます。難しい本を切り続けると、速さの土台になる語彙と背景知識のほうが伸びません。読んだ冊数を増やすための道具でもないので、時間が足りない時の配分に限って使います。切ると決めた本の題名だけでも残しておくと、あとで戻れます。

確かめられ方

Duggan と Payne が2009年に報告した3つの実験と2011年の続報が、時間の足りない読者は得るものが減った時点で先へ飛ぶと実測しています。対象は限られた時間で文章を読む場面で、中身は読み手の行動をそのまま観察した結果です。見切り方の良し悪しを比べた実験は見当たらず、効き目そのものは分かっていません。

解説動画(海外・英語): We engage with things that smell worth the effort | Information foraging theory illustrated/Mike Morrison

見込みで選ぶ: 動画は、木の実を探しに出た原始の人にたとえて始めます。目の前に茂みが三つあり、どれに手を伸ばすかを決める場面です。情報にも同じまとまりがあり、検索結果の一件ずつ、動画の一本ずつが探しに行く先の候補になると言います。人はその候補を、手間と見込みの釣り合いで選り分けているという見方です。

手間を先に引く: 奥のとげだらけの茂みは選ばれません。手を切り、そこまで歩き、傷を治すのに使う分が、取れそうな五粒より高くつくからだと言います。これが手に入れるまでの手間で、使いにくいうえに得るものも少ないものはそもそも使われないと述べます。読み手の側も同じ引き算をしている、という話です。

におい=見込み: 残った二つのうち、実が多そうに見えるほうへ手が伸びます。この多そうに見える度合いが情報のにおいで、いま何を探しているかで変わると言います。手間が小さければ弱いにおいでも覗きに行き(15秒の短い動画)、においが強ければ壁の向こうの記事にも手を尽くす。両方そろった時がいちばん手が伸びる、と述べます。

目的で変わる: 同じ検索結果でも、何を求めているかでにおいは入れ替わります。確かな説明が欲しい時はかしこまった身なりや見覚えのある看板の付いた講演に、経験談が欲しい時は語り手の来歴や人柄に、気晴らしが欲しい時は短い動画に、それぞれ強く匂うと言います。目的が動けばにおいも動くので、読む目的を決めるが選り分けの前提になります。

減ったら移る: 最後は移り方の話です。人は返ってくるものが減った所でその候補を離れ、次へ移ると言います。美術館は一枚ずつ見て流れていく形を作り、配信の一覧では興味の無い列ほど速く送られ、気に入った列では一つずつ止まる。読む物を途中で閉じる判断も、同じ移り方の一つとして見られます。