下読み
読む前に決める
本文に入る前に全体をひと巡りして見当をつける
どんな技?
本文に入る前に、目次と見出しと図表を5分前後でめくります。中身を読むのではなく、どこに何があるかの見当をつけるだけの作業です。数字や結論を覚える必要はありません。この本が何をどの順で言うつもりかを拾ったら、そこで止めて本文は後回しにします。厚い本なら、章に入る直前にも同じことを小さく繰り返せます。何分で切り上げるかを先に決めておくと、そのまま本文へ流れ込むのを防げます。
なぜ効くのか
先に大枠を受け取っておくと、本文の一つ一つを置く場所が決まった状態で読めます。新しい情報を宙に浮かせたまま抱える量が減るので、認知負荷が下がる向きに働くと説明されています。ただし報告されている効果は平均して小さいままで、理解が少し上がる程度の話です。読む時間が縮むという働きは、この技には見当たりません。
やり方
目次から入り、章の見出しを順に読み、太字と図表と章末のまとめへ飛びます。3分から10分の幅で切り上げ、終わったら一番知りたい章に印をつけます。分厚い本では章に入る前にも同じ手順を繰り返し、見出しだけを追ってから本文へ下ります。印の位置がそのまま読む順になり、読まない判断の材料にもなります。余裕がないときは、目次と章末のまとめだけでも形になります。
はまりどころ
めくっただけで読んだ気になるのがいちばんの落とし穴で、これはわかった気そのものです。読む時間が短くなるという宣伝を裏づける結果は、研究の側に見当たりません。SQ3R という5段階の段取りの一部として語られますが、5段階まるごとが確かめられているわけではありません。強い部分は後ろの読んで唱えて見直す側に寄っています。
確かめられ方
Luiten らが1980年に行ったメタ分析は、先に枠組みを渡す教材の効果を平均して小さいとまとめています。対象は学校の教材が中心で、下読みの段階だけを取り出した検証は乏しいままです。SQ3R のうち検証が集まっているのは唱えて見直す部分で、McDaniel らの2009年の実験がそこを扱っています。
解説動画(海外・英語): Reading effectively - a 3-stage lesson guide/Teaching English with Oxford
前・中・後に分ける: 読むことを、読む前・読みながら・読んだ後の三つの段階に分けて組み立てる手引きです。語学の授業を想定し、段階ごとにどんな手があるかを順に挙げていきます。一つの文章を一気に読み切らせるのではなく、本文の前後に別の作業を置く作りです。読む前に置かれるのは知っていることを出すことと目的をはっきりさせることで、全体をざっと見る手順そのものは出てきません。
知っていることを出す: どんな話題でも、読み手が持っている背景知識と経験には差があります。新しい文章はその知識を使って理解するので、読む前に先にそれを引き出しておくのが役に立つと説明されます。使うのは写真と短い問いかけで、写っているものは何か、集めものをしている人が身の回りにいるかを尋ねます。出てきた言葉のうち鍵になる語は書き出して残します。
何のために読むか: 母語で読むときも、そこには必ず目的があると述べられます。必要な情報を得るために料理の作り方を読み、楽しむために雑誌の記事を読む——目的が違えば読み方も変わります。だから読み始める前に、今回は何のために読むのかをはっきりさせます。文章の種類を早く見分けるだけなら一語ずつ読む必要はなく、決まった語句を探すときは丁寧に読みます。
段落ごとに止める: 一度読んだだけで理解するのは難しいので、通しで読ませずに段落や節ごとに止めるやり方が挙がります。止めたところで二人組か小さな集まりになり、ここまでで読んだ内容を思い出して言い合います。声に出して説明させられること自体が理解を進め、説明の裏づけを取るために自分から読み返す姿がよく出ると言います。
面白かったこと一つ: 読み終わりには、その文章で面白かったことを一つ挙げてもらいます。考える時間を渡し、まず自分の見つけた例を先に示します。続きを調べるのは任意の宿題で、あくまで本人の関心のためという置き方です。次の回で調べたことを短く話し合いますが、最初は何も返ってこないので何度か繰り返す前提で構えるようにと添えられます。