視界を片づける
場所と音
机と画面から、目に入るものをあらかじめ減らす
どんな技?
机の上をいま使う資料だけにしてから始めます。画面のほうも同様に、閉じられる窓とタブを先に閉じます。作業のあいだ手が伸びるものを視界から外す作業なので、収納の工夫ではなく一分で終わる下ごしらえとして置きます。見えていないと困るものは一つだけ残します。画面の窓をいくつ開けるかという話は、窓を一つだけ開けるが受け持ちます。
なぜ効くのか
同時に見えている複数のものは、視覚の側で互いの反応を抑え合うと報告されていて、注意はその競合を打ち消す働きをします。目に入ったものへ手が伸びれば、そこから注意の切り替えの代償も乗ります。ただし、この仕組みがあることは片づけると作業が進むという意味ではありません。仕組みの話と効き目の話は、分けて読む必要があります。
やり方
始める前に、机の上から今日使わないものを箱か引き出しへ移します。画面は使う窓だけを残し、通知が出る窓は閉じます。かける時間は一分前後を上限にします。これより手をかけると、ノートを美しく作ると同じ道筋で見た目を整える作業が目的に化けていきます。終わりに元へ戻すところまで含めておくと、次も同じ状態から入れます。
はまりどころ
片づけの効き目は実験で比べられていませんから、やって損はない程度の技として置くのが正直です。効くという報告も効かないという報告も乏しく、好みの範囲を出ません。近い題材のスマホを別の部屋に置くでも、置き場所を変えて比べた追試では差が出ませんでした。片づけると調子が出るという実感は本人には確かなものでも、裏づけの代わりにはなりません。
確かめられ方
McMains と Kastner が2011年に示したのは、同時にある刺激が視覚の反応を抑え合い、注意がその競合を打ち消すという仕組みです。測られているのは脳の反応で、机や画面の状態でも作業の出来高でもありません。片づけると成績が上がるかを直接比べた対照研究は見つからないので、効くとも効かないとも言えません。
解説動画(海外・英語): How to Create an Organized Workspace That Boosts Focus/Banq Official
慣れて見えなくなる: 生産性というとアプリや手帳を思い浮かべがちだが、集中を大きく左右するのはまわりに置いてあるもののほうだ、と動画は切り出します。よく走る車でもコースに物が転がっていれば速くは走れない、という喩えです。人は散らかりに少しずつ慣れてしまうので、山になった机も、絡まったケーブルも、貼りっぱなしの付箋も目に入らなくなる。それでも脳のほうは気づいている、と述べます。
見えるものが奪い合う: 注意を調べてきた研究では、見えているものが注意を奪い合うと分かっている、と紹介します。視界に入ったものはどれも脳が少しだけ処理する対象になり、そこで資源が使われます。一つ一つはごくわずかでも、数が集まるとじわじわ削られる。五十人が別々の小声で話す部屋で本を読むようなものだ、という喩えを添えます。
見た目でなく機能: 目指すのは完璧な机ではなく機能する机だ、と続けます。写真映えする無駄のない机を思い描いて、自分の机と比べて始める前にあきらめる人が多い。問うべきは見栄えではなく「次の作業が楽になるか」のほうだ、と言います。探し物や絡んだケーブルのような数秒の引っかかりも、積み重なると始めること自体が面倒になる、と付け加えます。
いまの作業だけ出す: 具体策として挙がるのは、いま使うものだけを見えるところに残す形です。昨日の残り、明日の書類、未開封の郵便が広がっていると、無視しているつもりでも未完の用事の合図が並んでいることになる。画面も同じで、忘れるのが怖くて開いたタブほど溜まるので、窓を一つだけ開けるように使うものだけにすると静かになる、と述べます。
片づけが目的になる: 終わりの数分で元へ戻す習慣を勧めたうえで、買って解決しようとしないことを付け加えます。収納箱を十個買っても、要らないものが十箱に移るだけだからです。そして、三時間片づけて三十分の仕事を避けることがある、と釘を刺します。机はぴかぴかで仕事は待ったまま——ノートを美しく作ると同じ道です。