家と職場を使い分ける
場所と音
静けさと、中断の起きやすさで作業する場所を選ぶ
どんな技?
作業する場所を、好みではなく静けさと中断の起きやすさの二つで選びます。同じ作業を家と職場で一度ずつやり、何に何回止められたかを書き留めるところから始めます。家は話し声が少ない代わりに、自分から止まる中断が増えがちです。書き留めるのは中断の中身と回数だけで、良し悪しの採点は要りません。静かでも中断が多い場所はあるので、二つは別に数えます。
なぜ効くのか
場所ごとに変わるのは、耳に入る話し声の量と中断の入り方の二つです。話し声が言葉として聞こえる場所では、人の話し声を避けるで挙げた妨害がそのまま起きます。中断が入れば戻るまでに切り替えの残りかすが乗るため、中断の種類が場所ごとに違うことが、そのまま向き不向きになります。静けさは場所の性質、中断は居る人と自分の癖で決まります。
やり方
覚える作業と書く作業を話し声が入らない側へ、打ち合わせや軽い用事を人のいる側へ回します。曜日で決めておくと、毎回選ばずに済みます。場所を移るときはしおりを残すで続きを書いてから動きます。二週間ほど記録を続けます。記録は一行のメモで足り、時間まで測らなくてかまいません。どちらでも起きる中断は、場所ではなく通知や自分の癖のほうで直します。
はまりどころ
在宅のほうが集中できると読める根拠ではありません。測られているのは勤務の形と業績や離職で、個人の集中そのものではありません。家には家族や家事という別種の中断があり、職場には話し声があります。言えるのは静かさが効いたという要素までなので、作業ごとに割り振るところで止めるのが妥当です。働き方としてどちらが望ましいかは、この図鑑の話ではありません。
確かめられ方
Bloom らが2015年に行った在宅勤務の無作為化実験で、個人作業の能率が上がり、理由の中心は静かな環境でした。対照群とランダム化を備えた研究で、Bloom らが2024年に出したハイブリッド勤務の試験は1,612人、成績は落ちず離職が減っています。ただし測られているのは業績と離職で、集中そのものの測定ではありません。
解説動画(海外・英語): Go Ahead, Tell Your Boss You Are Working From Home | Nicholas Bloom | TEDxStanford/TEDx Talks
疑われてきた形: 在宅で働くことがどう見られてきたかから入ります。ロンドンにいた頃は友人に家で働くのはサボることだと冷やかされ、画像検索に出てくるのは漫画や下着姿の絵ばかりだったと言います。2013年に大手企業の社内文書が漏れて在宅の可否が二週間論じられた騒ぎも挙げ、印象だけで語られてきた題材だと置きます。
通勤という古い形: 次に通勤の話へ移ります。アメリカで働く人は行きに45分、帰りにも同じくらいを使い、その大半が車です。事務所や工場へ集まる形は1800年ごろに作られたもので、それ以前は家で働いていたと述べます。通信の手段が変わったのに同じ形を続けているのは後ろ向きなのではないかと問いを立てます。
実験のつくり: 確かめ方は薬の試験に倣った形です。中国の旅行会社で在宅を希望する人を募り、誕生日が偶数の人を9か月の在宅へ、奇数の人を事務所へ振り分けました(対照群とランダム化)。上司もシフトも同じで、在宅の側も週に1日は出社します。変わるのは働く場所だけという条件を作ったと説明します。
静かさが効いた: 結果は在宅側の能率が13%上がるというもので、理由を二つ挙げます。一つは遅刻や長い昼休みが無くなり、持ち場の時間を丸ごと働けたこと。もう一つは家のほうが集中しやすかったことで、隣の席の失恋話や休憩室のケーキの誘いを並べ、事務所は実はとても騒がしいと述べます(人の話し声を避ける)。
選べる形にする: 離職が半分に減ったことも成果に挙がります。実験の後、全社へ広げて本人に選ばせると、冷蔵庫とテレビとベッドに負けて事務所へ戻る人も出ました。残ったのは家で集中できた人だけなので、その後の24%という伸びは読み替えが要ります。動画は週1日からでも試す形を勧めますが、測られたのは能率と離職で、集中そのものではありません。