歌詞つき音楽を切る
場所と音
裏づけ: 条件つきで効く / 手間: すぐできる
歌詞つき音楽を切るのは、読む・書く作業のときに歌詞のある曲を止めることです。
どんな技?
読む作業と書く作業のあいだだけ、歌詞のある曲を止めます。やり方は無音にするか、歌の入っていない曲へ替えるかの二択です。手を動かす単調な作業では止める理由が薄いので、そのままでかまいません。曲を選び直す時間そのものが中断になるため、先に決めた一本を流しっぱなしにする形にしておきます。切るかどうかは作業の種類で決め、気分では決めません。
なぜ効くのか
歌詞は音楽としてではなく言葉の材料として耳から入り、文章を読む作業と同じところで取り合う、と説明されます。耳に入る筋道は人の話し声を避けると重なります。一方、音楽全体では気分を上げる働きも見られ、読みへの悪影響とは向きが分かれ、全体では差が出ていません。中国の大学生90人の実験(Sun ら、2024年)では、読む文章と同じ言語の歌詞のとき、落ち方が最大でした。手がかりは、その作業が言葉を扱うかどうかです。
やり方
読む・書く・覚えるの三つに入る前に、歌の入った曲を止めるところまでを始める合図にします。無音がつらいときは、歌詞のない曲かホワイトノイズへ替えます。音量を下げてしのぐ手は当てが外れやすく、歌詞が聞き取れる限りは言葉として入ってきます。歌つきの曲は手作業や片づけの時間へ回し、曲を触るのは休憩のときだけと決めます。
はまりどころ
雑音や音楽全体にも小さな悪影響が報告されており、歌なしへ替えれば無害、とまでは言えません。Sun らの実験では、ふだん音楽をよく聴く人のほうが落ち方が小さいと報告されています。学生40人が好きな曲で単調な反応課題をした実験(Kiss ら、2021年)では、うわの空が減りましたが、反応の速さは変わりませんでした。音楽で頭の働きそのものが上がる話はモーツァルト効果の担当です。
確かめられ方
Vasilev らが2018年に出したベイズ流のメタ分析(65研究)では、雑音・話し声・音楽のどれも読みへの悪影響は小さいが確かで、歌詞のある音楽と聞き取れる話し声がいちばん大きな妨げでした。Kämpfe らの2011年のメタ分析は、音楽全体では差が出ない一方、読みは妨げられ、感情面には良い影響があるとまとめています。読みの結果を、そのまま書く作業へ広げることはできません。
出典
- 論文・英語 Martin R. Vasilev, Julie A. Kirkby, Bernhard Angele(2018) Auditory Distraction During Reading: A Bayesian Meta-Analysis of a Continuing Controversy
- 論文・英語 Juliane Kämpfe, Peter Sedlmeier, Frank Renkewitz(2011) The impact of background music on adult listeners: A meta-analysis
- 論文・英語 Yanping Sun, Chuanning Sun, Chang Li, Xinrui Shao, Qingming Liu, Hongen Liu(2024) Impact of background music on reading comprehension: influence of lyrics language and study habits
- 論文・英語 Kiss L, Linnell KJ(2021) The effect of preferred background music on task-focus in sustained attention
解説動画(海外・英語): Does Music Really Help You Study? 🎧 | Fact or Fiction Quiz/My Premium Learning
上がるのは気分: 音楽と勉強をめぐる十の言い分を、事実か作り話かで順に答えていく回です。一つ目の「聴けばいつでも集中が上がる」は作り話。曲は気分を持ち上げ、退屈を減らし、机に向かう時間を楽しくしますが、それは集中が良くなったことと同じではないと述べます。注意の量は限られていて、旋律を追い歌詞を聞き分けるぶん、教材へ回せる分が減る。効き方は人と曲と作業によるという整理です(BGMで集中力が上がる)。
歌詞は言葉と競う: 二つ目は事実。読むとき頭は語を見分け、意味を取り、考えをつないでいます。歌詞のある曲は、聴くつもりが無くてもその言葉まで処理させるので、同じ言葉の働きを奪い合うと説明します。結果として込み入った文章の理解や用語の記憶、細かく書く作業が重くなります。歌が始めた途端に全部忘れるという話ではなく、扱う情報が一つ増えるという意味だと断ります。
同じ言語ほど強い: 三つ目の「器楽なら学びが良くなる」も作り話で、言葉が無くても速さや音量の変化が注意を引くと断ります。四つ目は事実。教材と歌詞が同じ言語のときに競合が強まると述べます。英語の教科書を読みながら英語の歌を聴けば、意味を持つ言葉が二方向から届き、どちらが仕事の言葉かを分ける手間が乗ります。知らない言語の歌は響きで注意を引いても、意味の取り合いまでは起きにくい、という整理です。
好きな曲ほど食う: 五つ目の「好きな曲がいつでも一番」も作り話。好きな曲はやる気を上げる一方、歌詞を覚えているぶん先を待ち構え、口ずさみ、初めて聴いた場面まで思い出すので、いちばん注意を持っていく曲でもあると言います。軽い作業では好みの曲が助けになった報告もあるが、込み入った学びでは別。いつも音楽で勉強している人も慣れで無傷にはならないと続けます。
作業ごとに変える: 終盤は使い分けの話。取りかかる前に流して気分を作り、深く考え始めたら下げるか切る。整理や見慣れた練習は音があってよく、読む・覚える・難しい問題は無音か歌なしへ寄せます。不意の物音や話し声を覆う目的で静かな器楽を使う手もある、とも(人の話し声を避ける)。最後は同じ作業を条件を変えて自分で試し、感じた集中ではなく結果で決めろと結びます。