歌詞つき音楽を切る

場所と音

読む・書く作業のときは、歌詞のある曲を止める

どんな技?

読む作業と書く作業のあいだだけ、歌詞のある曲を止めます。やり方は無音にするか、歌の入っていない曲へ替えるかの二択です。手を動かす単調な作業では止める理由が薄いので、そのままでかまいません。曲を選び直す時間そのものが中断になるため、先に決めた一本を流しっぱなしにする形にしておきます。切るかどうかは作業の種類で決め、気分では決めません。

なぜ効くのか

歌詞は音楽としてではなく言葉の材料として耳から入るので、文章を読む作業と同じところで取り合います。耳に入る筋道は人の話し声を避けると重なり、内容が変わり続ける言葉がいちばん響きます。一方で音楽には気分を上げる働きもあるため、良い向きと悪い向きが打ち消し合い、全体では差がほとんど残りません。向きを決めるのは好みではなく、その作業が言葉を扱うかどうかです。

やり方

読む・書く・覚えるの三つに入る前に、歌の入った曲を止めるところまでを始める合図にします。無音がつらいときは、歌詞のない曲かホワイトノイズへ替えます。音量を下げてしのぐ手は当てが外れやすく、歌詞が聞き取れる限りは言葉として入ってきます。歌つきの曲は手作業や片づけの時間へ回し、曲を触るのは休憩のときだけと決めます。

はまりどころ

好きな曲なら邪魔にならないという思い込みは、好みの曲でも読解が落ちた実験があるので当てになりません。ただしそれは1本の実験なので、歌つきなら常に落ちるとまでは言えません。全体の効果がほぼゼロという整理は、曲があっても変わらない人がいるという意味も含みます。音楽で頭の働きそのものが上がるという話は、モーツァルト効果が受け持つ別の筋です。

確かめられ方

Perham と Currie が2014年に行った実験で、自分が好きな曲でも歌詞があると読解が落ちるという結果が出ています。測られているのは読解の成績で、覚える作業や手を動かす作業まで同じとは示されていません。Kämpfe らが2011年に出したメタ分析では音楽全体の効果はほぼゼロで、良い方向と悪い方向が打ち消し合っています。

解説動画(海外・英語): Does Music Really Help You Study? 🎧 | Fact or Fiction Quiz/My Premium Learning

上がるのは気分: 音楽と勉強をめぐる十の言い分を、事実か作り話かで順に答えていく回です。一つ目の「聴けばいつでも集中が上がる」は作り話。曲は気分を持ち上げ、退屈を減らし、机に向かう時間を楽しくしますが、それは集中が良くなったことと同じではないと述べます。注意の量は限られていて、旋律を追い歌詞を聞き分けるぶん、教材へ回せる分が減る。効き方は人と曲と作業によるという整理です(BGMで集中力が上がる)。

歌詞は言葉と競う: 二つ目は事実。読むとき頭は語を見分け、意味を取り、考えをつないでいます。歌詞のある曲は、聴くつもりが無くてもその言葉まで処理させるので、同じ言葉の働きを奪い合うと説明します。結果として込み入った文章の理解や用語の記憶、細かく書く作業が重くなります。歌が始めた途端に全部忘れるという話ではなく、扱う情報が一つ増えるという意味だと断ります。

同じ言語ほど強い: 三つ目の「器楽なら学びが良くなる」も作り話で、言葉が無くても速さや音量の変化が注意を引くと断ります。四つ目は事実。教材と歌詞が同じ言語のときに競合が強まると述べます。英語の教科書を読みながら英語の歌を聴けば、意味を持つ言葉が二方向から届き、どちらが仕事の言葉かを分ける手間が乗ります。知らない言語の歌は響きで注意を引いても、意味の取り合いまでは起きにくい、という整理です。

好きな曲ほど食う: 五つ目の「好きな曲がいつでも一番」も作り話。好きな曲はやる気を上げる一方、歌詞を覚えているぶん先を待ち構え、口ずさみ、初めて聴いた場面まで思い出すので、いちばん注意を持っていく曲でもあると言います。軽い作業では好みの曲が助けになった報告もあるが、込み入った学びでは別。いつも音楽で勉強している人も慣れで無傷にはならないと続けます。

作業ごとに変える: 終盤は使い分けの話。取りかかる前に流して気分を作り、深く考え始めたら下げるか切る。整理や見慣れた練習は音があってよく、読む・覚える・難しい問題は無音か歌なしへ寄せます。不意の物音や話し声を覆う目的で静かな器楽を使う手もある、とも(人の話し声を避ける)。最後は同じ作業を条件を変えて自分で試し、感じた集中ではなく結果で決めろと結びます。