睡眠時間を削らない

睡眠

短い睡眠が続くと、落ちた自覚がないまま成績が下がる

どんな技?

眠る時間を予定の余り物にせず、先に置いてから勉強の枠を決めます。起床時刻から逆算して床につく時刻を書き、その時刻で手を止める約束にしておきます。夜に足りなくなった分は翌日の朝や昼へ動かし、削る先を眠りにしないようにします。足りているかは気分ではなく、日中の眠気と休日の寝坊の量で見ます。枠を守れた日と守れなかった日は、同じ記録に残します。

なぜ効くのか

短い睡眠が続くと、注意が抜ける回数が日ごとに積み上がっていきます。厄介なのは自覚の方で、主観的な眠気は最初の1日に上がったあとほとんど増えません。落ちているのに気づけないため、メタ認知の側から自分の状態を測れなくなります。だから調子の感覚ではなく、寝た時刻の記録で判断する組み立てになります。眠気が消えたかどうかも、数日単位で見る方が確かです。

やり方

起床時刻は起きる時間をそろえるに任せ、そこから必要な長さを引いて床につく時刻を書きます。1週間、実際に寝た時刻と日中の眠気を記録します。眠気が続くなら就寝を15分ずつ前へ動かし、眠気が消える幅で止めます。必要な長さは人によって違うので、数週間かけて自分の幅を探すことになります。眠気が消えたところで就寝時刻を固定します。

はまりどころ

落ちるとはっきり言えるのは単純な注意の抜けで、推論の正確さはほとんど落ちていません。理解力や発想までまとめて下がると広げるのは行き過ぎです。全員が8時間という決め方もしません。眠れない日が長く続くようなら医療機関に相談する範囲で、ここで判断する話ではありません。週末の寝だめで返そうとするのも、別の問題を呼びます。

確かめられ方

Van Dongen ら 2003 は健康な成人48人を4・6・8時間に割り付けて14日続け、4時間と6時間の群で日ごとに積み上がる低下を示しました。主観的な眠気は初日に上がったあとほとんど増えず、本人は悪化に気づいていません。Lim と Dinges 2010 のメタ分析でも、落ち込みが大きいのは注意の抜け(g=-0.78)でした。推論の正確さはg=-0.13で、ほとんど動いていません。

解説動画(海外・英語): What staying up all night does to your brain - Anna Rothschild/TED-Ed

徹夜を選んだ夜: ローマ史の期末試験が明日、でも範囲が終わらない——動画はここで徹夜を選んだ一晩を、体の側から追いかけます。夜更かしは24時間周期のリズムと張り合う行為だと述べ、日が沈むと目が光の減りを脳の視交叉上核へ伝え、松果体がメラトニンを出しはじめると説明します。量が上がりだすのはいつもの就寝の2時間前あたりです。

眠る支度と眠気: 同じころ視床下部と脳幹の神経細胞がGABAを放ち、脳の働きをゆるめて気持ちを静めます。眠る前は脳を冷やす必要があるため深部体温も下がりはじめます。一方、起きているあいだ脳にはアデノシンという老廃物がたまり続け、受容体につくほど眠く、注意が散る。地図が顔に見えてくる場面が、そのしるしとして挟まれます。

先送りされる工程: カフェインはアデノシンが受容体につくのをさえぎって眠気を先送りしますが、そわそわして不安が強まることもあると動画は添えます。暗記は進み、名前と日付はいったん海馬に入ります。ふだんなら眠るあいだに固められて長期の置き場へ移るところですが、今夜はその工程が来ないまま朝になります。

体のほうが先に: 数秒だけ眠りに落ちる微小睡眠が予告なく訪れ、伸びをして起きていようとしても、このころには運動の制御も落ちています。動画は、19時間起き続けた人の協調運動と反応の速さが酒を飲んだ人と近いという報告に触れます。日が昇るとメラトニンの放出が止まって第二の風が吹き、上機嫌で家を出るのも寝不足が一時的な高揚を生むためで、ドーパミンが上がった分選び方をまちがえやすくなるとも述べます。

記述で手が止まる: 試験は択一で滑り出しても、記述で手が止まります。眠るあいだに脳は新旧の記憶を結んでいると考えられており、寝ていない脳は事実を吐き出せても、筋道を見つけたり解いたりが難しくなると動画は述べます。一晩なら戻りは早い一方、7時間を切る夜が続くこと自体が体調や気分の問題と結びつき、起きる時間をそろえるなど睡眠の時刻が規則的な大学生は平均の成績が高い、と結びます。