ピトー管の原理
圧力と速さ
止めた圧力と横の圧力の差から速さを出す
どんな現象?
先端に流れへ正面から向いた穴、側面に流れと平行な穴を持つ細い管です。正面では流れが止まって全圧が、側面では勢いの混ざらない静圧が拾われ、二つの差から速さを出します。旅客機の機首の下や風洞の壁から、細い棒のように突き出ているのがそれです。小さな穴が二種類あるだけの、驚くほど単純な部品です。
なぜ起きるか
正面の穴の前で流れは行き止まりになり、勢いの分だけ圧力が上がります。側面の穴のところは流れが素通りするので勢いは加わらず、周りの圧力だけを写します。差し引きで残るのが勢いの分、というわけです。ただしその差は速さの二乗で増えるので、遅いときは値が荒れます。速い流れになるほど、同じ仕組みがよく効くようになります。
どこで見られるか
旅客機、競技用の車、風洞、建物まわりの風の測定、水路の流速計。中身は動圧と静圧そのもので、正面の穴を置く場所がよどみ点です。動く部品がなく壊れにくいので、三百年近く形をあまり変えずに使われ続けてきました。飛行機では何本かを別々の場所に付け、互いの値を突き合わせておかしい一本を見つけます。
勘違いしやすいところ
出てくる値は本当の速さではなく、空気の濃さの影響を受けた指示の速さです。高いところでは実際より小さく出ます。穴が氷や虫、外し忘れた覆いでふさがると値が狂い、実際に事故の原因になってきました。取り付けの角度が少しずれるだけでも差が出るので、見た目ほど気楽な道具ではありません。
解説動画: 【航空力学】対気速度/とあるP君の勉強日誌
動圧は手に感じる圧力: 対気速度とは、その名のとおり空気に対して飛行機が飛ぶ速さ。使うのはベルヌーイの式で、全圧は静圧と動圧の和として一定になる、という関係。静圧はいわゆる大気圧、動圧は空気が物にぶつかったときに生じる圧力で、走る車の窓から手を出したときに手が受けるあれが動圧だと説明される。
先端で全圧、横穴で静圧: 式を速度について解くと、全圧から静圧を引いた分さえ分かれば対気速度が出る。それを測るのがピトー管で、横から見れば機体に付いた筒。先端で全圧を、横に開いた穴で静圧を測る。横穴は動圧が加わらない位置にあるので静圧だけを拾える。この差が速度計を振らせている。
密度を決め打ちしたEAS: 式には空気密度も入っていて、これは高度と温度で常に変わる。そこで標準大気の海面高度の密度を代表値に固定した速度が等価対気速度(EAS)。EASを一定に保って飛べば動圧が一定になり、飛行機の性能は翼に当たる動圧で決まるので、どの高度でも同じ性能で飛べる。これが最大の利点だという。
計器が示すIASと補正: EASを速度計に出すまでに誤差が乗る。それを表示した値が指示対気速度(IAS)。誤差には計器そのものの器差などがあり、いちばん大きいのが取り付け誤差。機体の姿勢を変えたりフラップを出すとピトー管まわりの流れが変わるためだ。補正した値が較正対気速度(CAS)で、離着陸時のVR(ローテーション速度)のような低速域の規定に使われる。
TASから到着時刻まで: 静止した大気に対する速度が真対気速度(TAS)。高度が上がるほど、気温が上がるほど空気は薄くなるので、同じIASでもTASは大きくなる。目安は1000フィートで3ノットほど(動画も参考程度と断る)。TASに風を足せば対地速度、距離を割れば目的地までの時間、つまりETAが出る、というところまでつながる。