層流と乱流

粘りと抵抗

整って進む流れと、混ざり合う流れ

どんな現象?

線香の煙は最初まっすぐ上がり、ある高さで急にほどけて揺らぎます。前が層流、後ろが乱流です。蛇口を細く開けた水はガラス棒のように透き通り、大きく開けると白く濁って音も出ます。層流は隣の層と混ざらずに進み、乱流は大小の渦で絶えず混ざり合います。

なぜ起きるか

流れが持つ勢いと、粘りが引き止める力の綱引きで決まります。粘りが勝つ場面では、小さな乱れはその場で消えてしまい、層のまま進みます。勢いが勝つと、わずかな乱れが引き延ばされて渦になり、その渦がまた小さな渦を生み、砕けながら熱へ変わります。二つの比がレイノルズ数で、切り替わる値は形ごとに違います。

どこで見られるか

線香の煙が途中で乱れる場面がいちばん見やすい例です。川では深くゆるい淵は鏡のようで、浅く速い瀬は白く波立ちます。飛行機雲がしばらく直線を保ってから数分でほどけるのも、まわりの空気が乱れているからです。血管の中の血液も、ふだんは静かな層流です。ただし心臓に近い太い血管では、拍動の山のところで一時的に乱れます。

勘違いしやすいところ

乱流イコール速い、ではありません。ねばい液体なら速く動かしても層のまま進みます。速さだけを見る読み方はレイノルズ数が大きい=速いという読み違いで扱います。乱流は悪者でもなく、よく混ざるので、熱を運ばせたい熱交換器や、燃料と空気をそろえたい燃焼室では、わざと乱して使います。ただし個々の渦の動きは、いまも先まで予測しきれません。

解説動画(海外・英語): Understanding Laminar and Turbulent Flow/The Efficient Engineer

なめらかな流れと渦の流れ: 層流は層のまま滑らかに進む流れで、層どうしの混ざりはごくわずか。速さを上げていくと、ときどき乱れが吹き出す遷移が始まり、さらに上げると渦(エディ)を含む乱流になって激しく混ざる。1点で速さを測り続けると、層流は揺らぎが出ないので解析しやすい。乱流は時間平均の成分と揺らぐ成分に分けて考えることになり、揺らぐ成分が大きいほど乱れが強い。

勢いと粘りの比で予想する: どちらの流れになるかは、1883年にオズボーン・レイノルズが多くの実験から決めた無次元の数で見当がつく。これは流体を動かす勢い(慣性)と、粘りが引き止める力(粘性)の比。粘性が勝つと乱れの芽は摩擦で消されて層流になり、慣性が勝つと乱流になりやすい。長さに何を入れるかは対象しだいで、円柱なら直径、翼なら翼弦長、管なら管の直径を使う(レイノルズ数)。

管の中の速さと圧力の落ち: 管の壁のところでは流速がゼロになる(すべりなし条件)。層流の管内は中心が最も速い放物線の分布、乱流では混ざり合いで運動量が行き来するため壁から離れると平らな分布になる。長さあたりの圧力の落ちは乱流のほうがずっと大きい。層流では速さに比例するのに対し、乱流では速さの2乗に比例し、管表面の粗さにも左右される。

壁ぎわに残る薄い層流: 乱流でも壁のそばは粘性が勝ち、実質的に層流の極薄い層(層流底層)が残る。その上は粘性と乱れが両方効く緩衝層。レイノルズ数が上がるほど底層は薄くなるので、表面の凸凹が底層の厚みに収まっていれば流れは粗さを感じない(水力学的になめらか)。底層が極端に薄くなる高いレイノルズ数では、摩擦は相対粗さだけで決まる。技術者は解きにくいコールブルックの式ではなくムーディ線図で摩擦係数を読む。

大きな渦から小さな渦へ: 大きな渦の運動エネルギーは次々に小さな渦を生み、最小のスケールで粘性の摩擦により熱として散る。この受け渡しをエネルギーカスケードと呼ぶ。物理学者ルイス・フライ・リチャードソンは「大きな渦は小さな渦を持ち、その速さを糧にする。小さな渦はさらに小さな渦を持ち、粘性に至るまで続く」と言い表した。長さと時間の幅が広すぎるため、乱流は流体力学が抱える最大の難問とされる。