誘導抗力

粘りと抵抗

揚力を作った代償として出る抵抗

どんな現象?

揚力を生んだことの代償として現れる抵抗です。翼の端では下面の高い圧力が上面へ回り込み、渦になって後ろへ長く伸びます。重い機体の低速上昇でいちばん大きく、離陸直後の機体は一分から数分も渦を残すため、後続機は間隔をあけて離着陸します。速く巡航している間は目立ちませんが、上昇中の燃料はここに多く使われます。

なぜ起きるか

長さの限られた翼は、端で上下の圧力差が解消され、そこから渦が生まれます。この渦は翼のまわりの空気全体にわずかな下向きの流れを作ります。すると翼が受ける風の向きが少し下を向き、風と直角に出る揚力も同じだけ後ろへ傾きます。傾いた力の後ろ向き成分が、そのまま誘導抗力です。速く飛ぶほど小さくなる一方で摩擦や形の抵抗は増えるため、合計がいちばん小さくなる速さがあります。

どこで見られるか

グライダーや大型のわたり鳥の翼が細長く作られているのは、この抵抗を減らすためです。鳥の編隊飛行で斜め後ろに付くのは、前の鳥が残す渦の上へ向かう部分に乗るためだと考えられています。旅客機の翼端が上へ折れ曲がっているのも、回り込みを弱める工夫です。

勘違いしやすいところ

渦が後ろから引っぱっている、という絵で覚えると先を間違えます。効いているのは、受ける風の向きが変わるせいで揚力そのものが傾くことです。翼を長くすれば減りますが、重さと強度、駐機場の幅と引き換えになります。渦そのものの姿は翼端渦に詳しくあります。

解説動画: 【航空力学】アスペクト比と翼の性能/とあるP君の勉強日誌

アスペクト比は翼の細長さ: アスペクト比は翼を上から見た平面形についての比で、別名は縦横比。この値が大きいほど翼は細長くなる。中身はスパンの2乗を翼面積で割った値なので、面積をそのままに横へ伸ばすほど大きくなる。動画はこの一つの値で翼の性能がどう変わるかを追っていく。

スパン2倍で誘導抗力4分の1: 翼面積を変えずにスパンを2倍にすると、2乗で効くのでアスペクト比は4倍になる。誘導抗力の係数はアスペクト比に反比例する形で入っているから、そのまま4分の1まで減る。細長い翼が有利だと言われる根拠を、動画はこの置き換えで示している。

細長い翼の得と損: 縦横比が大きいときの得は、揚抗比が大きくなることと横安定が良くなること。効率よく飛べて姿勢も保ちやすい。損は翼の曲げモーメントが大きくなることで、そこから構造の問題が出てくる。だから縦横比の大きい翼は、性能を重んじ、姿勢変化の少ない安定した飛び方をする機体に向く——旅客機がその例。

あえて縦横比を小さくする機体: 逆に縦横比が小さいと曲げモーメントが小さく、頑丈な翼が作れる。代わりに揚抗比は小さく横安定も悪い。それでもアクロバット機はこちらを選ぶ。横安定が良すぎると舵が効きにくいので、わざと悪くして舵を敏感にし、俊敏に飛べるようにする。レッドブル・エアレースに出る機体は、ほとんどが縦横比の小さい翼。

揚力の出方まで変わる: 縦横比は揚力係数のグラフの形も変える。縦横比が小さい機体は揚力係数も最大揚力係数も小さい。そして縦横比が大きいほど、迎角に対する揚力係数の変化の割合、つまり揚力傾斜が大きくなる。これは飛行中に姿勢が変わったとき、揚力が急激に変わるということでもある。