境界層

粘りと抵抗

壁のすぐそばだけ流れが遅くなる薄い層

どんな現象?

川底や翼の表面のすぐそばでは、流れが本流よりずっと遅くなっています。壁に接した部分は速さがゼロで、離れるにつれて本流の速さに追いつきます。追いつくまでの厚みが境界層で、身近な大きさの物なら数ミリから数センチしかありません。煙や染料を流すと、壁ぎわだけ遅れて動くのが見えます。

なぜ起きるか

壁の表面では、流体が壁と同じ速さになります。すぐ外側の層は粘りで引き止められ、その外側もまた引き止められ、減速が外へ順に広がります。だから下流へ進むほど厚くなります。減速とは、流体が持っていた運動量を壁へ渡すことです。渡された分だけ物は流れの向きへ押され、進んでいる側から見れば進行方向と逆向きの力になります。これが摩擦抗力です。

どこで見られるか

机のほこりを扇風機で吹いても薄く残るのは、面の上に風がほとんど届かない層があるからです。川底の砂粒が流れの割に動かないのも同じ事情です。翼やレース車の表面を磨くのは、この層を乱さずに保つためです。掃除機の吸い込みでも、床に張りついたほこりが最後まで残ります。

勘違いしやすいところ

壁の近くほど流れが速いと思われがちですが、実際は逆です。この層が乱れることも、悪いとは限りません。乱れた層は外の速い流れを内側へ運び込むので、壁ぎわが勢いを持ち直し、流れが面から離れにくくなります。ゴルフボールのディンプルが抵抗を減らせるのは、まさにこの効果です。

解説動画(海外・英語): What is a Boundary Layer? | Cause of Boundary Layer Formation | Types and Impact of Boundary Layers/JxJ AVIATION

表面にできる薄い層: 物体が流体の中を動くとき、その表面にできる薄い流体の層が境界層。生まれる原因は面と流体のあいだの摩擦で、粘りのない流体には生じない。飛行機なら摩擦抗力の大きさ、翼の失速、高速機での熱の伝わり方に効いてくる、と動画は最初に並べる。

速さがゼロから戻るまで: ではなぜ層ができるのか。空気は粘りを持つ流体なので、機体が動けば面と空気のあいだに摩擦が生じる。その摩擦で面のすぐ上の粒子は面に貼りついて速さがゼロになり、離れた粒子は自由流の速さのまま。あいだは面から高くなるほど少しずつ速くなる。この速さが変わっていく高さの範囲が境界層だ。

層流と乱流の2種類: 境界層は2種類ある。層流境界層は中の流線が互いに平行に進む。乱流境界層は流線が平行でなく、粒子がばらばらに動く。層流のほうが摩擦抗力は小さいので、翼は層流の境界層を保つことで空力的な効率を上げようとしている(層流と乱流)。

厚い乱流のほうが粘る: 乱流境界層は厚くて抗力も大きい。それでも使い道があるのは、持っているエネルギーが多いぶん、逆向きの圧力勾配に層流より長く耐えられるから。逆向きの圧力勾配は流れを面から引き剥がして剥離を起こし、圧力抗力を増やす。乱流境界層はそれに逆らって剥離を止める。

わざと乱れさせる: そこで乱流境界層を意図的に作ってしまう手がある。翼の上面に立てるボルテックスジェネレーターがそれで、乱流の境界層を作って翼の上での剥離を防ぐ。ゴルフボールのディンプルやテニスボールのざらついた表面も同じ理屈で、乱れを起こして抗力を減らしている。