鶏むね
肉の部位
鶏むねがパサつくのは、火を入れすぎることだけが原因だ
どんな食材?
胸の部位で、脂が少なくたんぱく質が多いのが特徴です。安価で扱いやすい一方、加熱しすぎると水分が抜けてパサつきます。スウェーデンの Tornberg は論文で、筋原線維のたんぱく質は溶液中で45〜50℃でゲル化し、コラーゲンは53〜63℃で変性して縮むと整理しています。米国アーカンソー大学の研究では、ひいて成形した鶏むね肉を23℃から80℃まで熱すると、重さが約10.3%減りました。
選び方・旬
厚みがあり、色が薄いピンクでつやのあるもの。皮付きと皮なしがあり、しっとりさせたいなら皮付きを選びます。日本食品標準成分表(八訂)の若どり・生100gでは、皮なしは105kcal・脂質1.9g・たんぱく質23.3g、皮付きは133kcal・脂質5.9g・たんぱく質21.3gです。脂を抑えたいなら皮なしが向きます。
下ごしらえ
そぎ切りにして繊維を短くする、砂糖と塩を少量もみ込んで30分置く、片栗粉をまぶす—— どれも水分を保つための方法です。ゆでるなら沸騰させず、火を止めた湯に入れて余熱で通すと劇的にしっとりします。焼くなら、Epicurious の動画でプロの料理人が言うとおり、厚い胸は横半分に切って厚さを揃えます(厚いと端が乾き、中心に火が届きにくいため)。焼く前に水気を拭き取ります。水気が残ると焼き色が付きません。
保存
冷蔵2日。買ってすぐ下味を付けて冷凍すると、解凍しながら味が入るので効率的です。鶏肉は生や半生で食べません。中心部を75℃以上で1分間以上加熱します。厚生労働省によると、健康な鶏でも腸にカンピロバクターを持つことがあり、数百個ほどの菌で感染が成立します。生肉に触れた調理器具は、使ったあとに洗って殺菌します。
出典
- 論文・英語 Tornberg E(Lund Institute of Technology)(2005) Effects of heat on meat proteins - Implications on structure and quality of meat products
- 論文・英語 Murphy RY, Marks BP(2000) Effect of meat temperature on proteins, texture, and cook loss for ground chicken breast patties
- 動画・英語 Epicurious(料理人 Frank Proto) The Best Chicken Breast You'll Ever Make (Restaurant-Quality) | Epicurious 101
- 公的機関 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)にわとり[若どり・主品目]むね 皮なし 生
- 公的機関 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)にわとり[若どり・主品目]むね 皮つき 生
- 公的機関 厚生労働省 カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)
解説動画: 【板前の技術】プロの技で鶏胸肉のパサパサとはおさらば!!/飲食店独立学校 /こうせい校長
失敗パターンを先に見せる: 何も処理せずに火を通した場合の失敗を3通り(レンジ・ゆでる・焼く)実演し、いずれも水分が抜けて縮み、硬くなることを確認してから本題に入る構成。
下処理: 処理をしないと皮が縮み、筋や余分な脂が残り、ドリップが付いたままになる。ここを整えるところから始める。
レンジのラップに穴を開ける理由: 蒸気の逃げ道を作らないと、冷めた瞬間にラップがへこんで食材を押しつぶし、うま味が抜けたり形が変わったりする。理屈も説明されていて、加熱で水分が水蒸気になると体積が約1700倍に膨らみ、冷えて水に戻ると約1700分の1に縮む—— その収縮でラップが凹む。密閉しているように見えても、隙間から水蒸気と空気は少しずつ抜けている。