鐘楼

塔と堂

時代: 時代を通じて

梵鐘を吊るためだけに建つ建物です。腰まわりを板で覆う袴腰付きか、柱を見せた吹放ちかで見え方が変わり、そこに時代と宗派の傾向が出ます。

どんな建物・部材か

梵鐘を吊ることだけを目的に建つ小さな建物です。四本または六本の柱で組み、内側の梁から鐘を下げ、上に入母屋造の屋根を載せます。奈良県の法隆寺東院鐘楼と東大寺鐘楼はどちらも国宝に指定され、滋賀県の石山寺鐘楼、石川県の妙成寺鐘楼が重要文化財として国指定文化財等データベースに載ります。床を張って人が上がる形と、地面に近い高さで撞く形があり、鐘の大きさが柱の間隔を決めます。

見分けの決め手

腰まわりが板で覆われているかどうかを、いちばん先に見ます。下半分へ袴のように板を張る形を袴腰付き、柱をそのまま見せる形を吹放ちと呼び、この呼び分けは建築史の図集や辞典で使われてきた区別です。奈良県の東大寺鐘楼は吹放ちで、太い柱と大きな組物が鐘の重さを受ける仕組みを外へ見せます。滋賀県の石山寺鐘楼は袴腰付きで、腰が裾へ向かって広がる輪郭になります。

どの様式に属するか

様式は建物ごとに分かれます。奈良県の法隆寺東院鐘楼は袴腰付きの和様で、鎌倉時代の姿を伝えます。禅宗の寺では禅宗様の鐘楼が建ち、柱の粽、足元の礎盤、隅の扇垂木がそろいます。袴腰付きは中世から近世にかけて増える形で、石川県の妙成寺鐘楼のように檜皮葺や杮葺の屋根と組み合わさる例が各地に残ります。様式と袴腰の有無は別々の手掛かりで、片方から他方は決まりません。

取り違えやすい相手

太鼓を納める鼓楼と、下層を門にした鐘楼門が相手です。何が吊られているかと、下をくぐれるかで分かれます。奈良県の唐招提寺鼓楼は国宝の楼造で、上下に縁と高欄が回り、鐘楼より背が高く見えます。鐘楼門は下層の通路を人が抜けられる点が違い、門と鐘楼を一つの建物にまとめた形です。経典を納める経蔵も大きさと屋根の形が似ますが、四方が壁で囲まれ、鐘を吊るための梁がありません。

どこに立つと見えるか

同じ地面の高さから、腰まわりと屋根を一度に見ます。石段の上から見下ろすと袴腰の広がりが平らに潰れます。滋賀県の石山寺鐘楼は本堂の東の高みに建ち、参道からは板張りの腰と縁が同時に入ります。次に真下へ寄り、貫と組物の重なりを見上げます。石川県の妙成寺鐘楼のように朝の光が斜めに当たる時間なら、板の継ぎ目と柱の陰影が分かれ、柱の間隔と鐘の径のつり合いまで読めます。