懸造

様式(和様・禅宗様・大仏様)

時代: 平安

崖や斜面に長い柱を立て、床を前へ持ち出す造りです。柱どうしを貫で縫って一体にし、平らな地面が足りない場所に堂の広さを確保します。

どんな建物・部材か

崖や斜面に長さの違う柱を立て、床を前へ持ち出す造りです。柱どうしを貫で何段も縫って一体にし、その上へ堂を載せます。鳥取県の三仏寺奥院、京都府の清水寺本堂、千葉県の笠森寺観音堂が国指定文化財等データベースに載る例で、国宝の指定名称は「三仏寺奥院(投入堂)」、附として愛染堂と永和元年の棟札一枚、古材四十三点が加わります。平らな地面が足りない場所で、堂の広さを確保するための構えです。

見分けの決め手

床下の柱の長さがそろっていないかを見ます。懸造は斜面の高低に合わせて柱の長さが一本ずつ違い、下へ行くほど長くなります。次に柱の間を横へ走る貫の段を数えます。貫が何段も通り、柱と貫が縦横に組み合う格子が床下に現れます。京都府の清水寺本堂では、この格子が斜面の上から下まで続き、離れた場所からでも段の重なりが読めます。柱の足元は近づけない場所にあることが多く、見るのは離れた位置からです。

どの様式に属するか

様式の名ではなく、床を持ち出す造り方の呼び名です。和様や禅宗様といった様式の名とは別に扱われ、堂そのものは和様で建つ例が多く残ります。鳥取県の三仏寺奥院は檜皮葺の小さな堂を斜面へ載せた形で、平安時代後期にさかのぼると説明されます。舞台造・崖造という別の呼び方も使われており、どれを正とするかは定まっていません。呼び分けの経緯は、紙の建築史の図集と辞典に頼る部分が残ります。

取り違えやすい相手

床の高い建物が広く相手になります。地面が傾いているか、柱の長さがそろっているかで分かれます。奈良県の唐招提寺宝蔵は高床の校倉ですが、地面が平らで柱の長さもそろい、懸造には数えません。石垣を積んで平場を作ってから建てた堂も、床下に長い柱が並ばない点で外から区別できます。滋賀県の石山寺本堂は前面が懸造で、同じ建物でも部分によって造りが変わります。

どこに立つと見えるか

堂そのものではなく、床下が見える斜面の下側から見ます。上から近づくと床の高さしか見えず、柱の組み方が分かりません。千葉県の笠森寺観音堂は四方が斜面で、下の道から見上げると柱の長さの違いが順に並びます。鳥取県の三仏寺奥院は谷をはさんだ遥拝所から望む形で、近づく道の可否は寺の掲示に従う場面です。落葉した季節は枝が抜け、床下の柱まで見通せます。