桟瓦葺
葺くもの
時代: 江戸
平瓦と丸瓦を一枚に合わせた波形の瓦を並べます。二種類の部材を一枚にまとめたぶん屋根が軽くなり、江戸時代の町家や農家へ広がりました。
どんな形か
平瓦の部分と丸瓦の部分をひと続きにした、断面がゆるいS字の瓦を並べる葺き方です。一枚の中に谷と山があるので、隣と噛み合わせるだけで面がつながります。屋根面の凹凸は浅く、影も薄いのが見た目の性格です。滋賀県の大津で1674年に瓦師の西村半兵衛が考案したと伝えられ、西村家に残る由緒書をもとにした解説が各所で紹介されています。数えるのは部材ではなく波の数になります。
見分けの決め手
決め手は屋根面に立つ筋の太さと、影の深さです。桟瓦では山と谷が同じ一枚の中にあるため、筋は細く、影は浅い縞にとどまります。軒先に回ると、瓦の小口が波形の断面として横一列に続き、円い筒の口は出てきません。同じ面積なら本瓦葺よりかなり軽くなるので、細い小屋組の住まいにも載せられるようになり、瓦屋根が町全体へ広がる下地になりました。
取り違えやすい相手
見誤る先は本瓦葺です。遠目には同じ瓦屋根でも、丸い部分が独立した部材かどうかで別の葺き方になります。判断は軒先が早く、丸瓦の円い小口が並べば本瓦葺、波の断面が続けば桟瓦葺です。岡山県の倉敷市倉敷川畔や広島県の竹原市竹原地区のような重要伝統的建造物群保存地区では、蔵に本瓦、住まいに桟瓦と葺き分けた例も見られ、一つの敷地に両方が並びます。
どこに立つと見えるか
通りの反対側へ渡ると、屋根面が斜めから視野に入ります。真下からでは瓦の形が分からず、少し離れて光の当たる面と影の面の差を見るほうが早く決まります。愛媛県の内子町八日市護国のように町家が並ぶ通りでは、軒の高さがそろうので一枚の面として比べられます。朝夕の低い光のときは浅い凹凸にも縞が出て、瓦の割付や葺き替えた範囲まで読めます。
読みと表記のゆれ
「さんがわらぶき」と読みます。「桟瓦葺」「桟瓦葺き」の両方があり、指定説明は送り仮名を省きます。旧字体の「棧」で書かれた資料も残ります。裏に突起を付けて桟木へ掛ける改良型は引掛桟瓦(ひっかけさんがわら)と呼ばれ、近代以降の住まいに広く使われました。西村半兵衛の考案という伝えは、由緒書という後代の記録が根拠で、考案の年や人については異なる説も示されています。