株元が黒ずんでぐらつく
株の不調
判定: その株を外す
株元が黒ずんだ株は、抜くほうが早く済みます。支持材が常に濡れている場所で起きます。
どう見えるか
定植パネルにさしこんだあたりが黒ずみ、指でつまむと茎がぐらついて、押すと汁がにじみます。支持材はいつも濡れたままで、白や灰色のかびが見えることもあります。支持材を外すと、内側がぬるついて崩れることもあります。上の葉は片側から力を失い、抜こうとすると株元から折れます。同じ列の隣の株が、数日遅れで同じ見え方になることがあります。
何が起きているか
根ではなく、常に濡れたまま乾かない支持材の中で進んでいます。霧は上向きに出て跳ね返り、パネルの裏と支持材に水の膜を作ります(跳ね返りと壁の水膜)。有機質の支持材は糸状菌に侵されやすく、噴霧栽培の試作機では栽培中に藻とかびの汚染を招いたと書かれています。乾く時間の無い場所が、病気の場所になります。
どうするか
まずその株を外します。次に支持材とネットポットを新しいものに替え、パネルの裏に溜まった水を拭きます。同じ列は数日、多めに見ます。そのうえで休止時間の決めかたを見直し、支持材が一度は乾く時間を作ります。株元だけでなく根も見て、崩れているなら系の側の話へ移ります(根がぬるついて崩れる)。薬剤の名前と使いかたは、この本では扱いません。
起こさないために
支持材は作ごとに新しいものへ替えます。有機質のものは分解しながらかびに侵されやすく、耐久性の高いものは処分がしにくいという行き来があります(Min ら 2023)。霧が株元へ直接当たらない向きにノズルを置き、パネルの裏に水が溜まらない形にします(定植スポンジ・ネットポット)。定植の穴は苗の茎に合う大きさを選びます。
どこまで確かめられているか
竹由来の支持材が栽培中にかびに侵されたことは、1台の試作機の観察として書かれています(Min ら 2023、J. Agric. Eng. LIV:1387)。国際宇宙ステーションの噴霧・水耕装置では、見た目に病気の出ていない株からもFusariumが検出されました(Khodadad ら 2026)。支持材の材質ごとに発生率を比べた試験は見当たりません。
解説動画: Damping Off In Seedlings - 8 Ways You Can Prevent It/The Ripe Tomato Farms
立枯れとは何か: 動画は、発芽までは順調だった苗が数日後に茎が腐り、根の組織も傷んで力なく倒れる状態を damping off(立枯れ)と呼びます。原因になる菌やかびは一つではない総称だと断ったうえで、土に潜む糸状菌の病気で、かかってからでは治せないと述べます。ただ、発芽しなかった種と取り違えることだけは起きない、とも言い添えます。
容器と用土は新しく: 予防の一つめは、鉢や容器、使う道具をすべて洗って消毒しておくことだと言います。漂白剤の一割の液か酢に漬けるのがよいと具体を挙げ、病気を広げたくないならここを省かないと繰り返します。二つめは用土で、病原は土そのものの中に生きているので、庭の土や使い回しの土を避け、毎回新しい育苗用の土から始める、と述べます。
温度と光と風: 三つめは温度で、華氏70〜90度まで上げると発芽が速く揃い、多くの病原のほうは気温が上がると勢いを失うと述べます。四つめの光は、全波長の光がかびの病原を壊すうえ、良い環境を与えて若い株を競り勝たせるのが本筋だとします。五つめは風で、株間を空ける、小さな送風機や戸を開ける——水滴を葉の上に留めないためです。
濡らしすぎない: 六つめは水で、湿らせるが濡らしはしない、が原則です。余分な水は根を腐らせ、病原が増える条件をそろえてしまうと述べます。七つめは底面からの給水で、土の表面と茎のまわりを乾いたまま保つと胞子が広がりにくく、小さな虫も寄りにくい。かびと病原をいちばんよく運ぶのは水だ、と言います。八つめは播く深さで、迷うなら浅めに、と結びます。
株元が濡れたまま: 扱っているのは土の育苗で、霧も定植パネルも出てきません。それでも動画が最後に並べる冷たく、暗く、濡れていて、風の通らない場所という条件は、この項目で株元が黒ずんでいく場所そのものです。治せないと動画が言い切る以上、早く外したうえで乾く時間を作る側へ手を入れる——休止時間の決めかたへつながる読み方になります。