新しい葉だけが黄色くなる
株の不調
判定: すぐ手を打つ
新しい葉から黄色くなるのは、鉄が届いていない形です。量ではなく、pHで届かなくなっていることがあります。
どう見えるか
色が抜けるのは株のいちばん上、いま伸びている葉からです。葉脈が緑の線で残り、その間だけが黄色くなります。下の古い葉は濃い緑のままです。ECは範囲に入ったままで、pHだけが日をまたいで上がっていることがあります。噴霧の側では霧の届きにくい列や、根が褐色に寄った株から先に出ることがあるので、棚のどこに出たかも控えます。
何が起きているか
入口は三つに分かれます。ひとつは養液のpHが上がって鉄が溶けていられなくなる形で、量ではなく形が変わり、根が取り込めなくなります(pHと養分の溶けかた)。ふたつめは根が傷んで吸えていない形(根が茶色く変わる)。みっつめは処方に足りていない形です。鉄は株の中を動けないので、どれでも新しい葉から出ます。
どうするか
先にpHを測ります。噴霧栽培の実機では、目標を5.8〜6.2に置いた運転で貯液槽の実測が5.92〜6.05という記録があります(Lee ら 2026)。上がっていれば下げ、そのうえで鉄のキレート剤が今のpHで効く型かを見ます。次に根を見て、褐変やぬめりがあれば根の側の手当てへ移ります。黄色くなった葉は緑に戻りません。
起こさないために
pHは毎日、同じ時刻に測ります。噴霧栽培は溜めている液の量が少ないぶん、補水と追肥でpHが動きやすい系です(補水と追肥)。鉄の目標は処方の段階で決めておきます——実機の例では生育の段階ごとに鉄2.00〜3.00 mg/Lを置いていました(Lee ら 2026)。pH計は校正してから使い、電極は乾かさずに保管します。
どこまで確かめられているか
貯液槽のpH 5.92〜6.05と鉄の目標2.00〜3.00 mg/Lは、韓国の温室でツボクサを定植から53日育てた一次研究の値です(Lee ら 2026、Frontiers in Plant Science)。葉物の噴霧栽培だけを取り出して鉄の欠乏を測った資料は見当たりません。pHと鉄の関係そのものは水耕の資料からの持ち込みです。
解説動画: Identfication of Nutrient Deficiencies (Greenhouse Plants)/e-GRO Webinars
本当に欠乏か: 動画がまず置くのは「これは本当に養分の欠乏か」という問いです。見分けの手がかりは模様の有無で、葉を本のように半分に折り、左右の傷みが重なるかを見ます。重なるなら養分や環境の側、てんでばらばらなら虫か病気の側。温室全体に同じ形で出るかどうかも同じ判断に使います。
灌水の系統で割れた例: 実例として、温室のうち片側の区画だけが黄ばみ、隣の区画は緑のままという写真が出ます。調べると、黄色い側は別の液肥の注入器から水を受けていて、その注入器が十分に効いていませんでした。境目が水と肥料の系統と一致するなら、生き物ではなく与え方の側が原因だ、という読み方です。
動ける養分か: 次に用語をそろえます。一度葉に入った養分を、必要としている別の場所へ回せるものが可動、回せず一方通行で終わるものが不動です。この区別だけで候補が一気に絞れる、と動画は言います。葉が黄ばむことをクロロシス、葉脈だけ緑に残る形を葉脈間クロロシスと呼び分けます(養分の動きやすさ)。
どこに先に出たか: 見るのは症状が今ある場所ではなく、最初に出た場所です。下の古い葉から始まったなら可動側で、窒素・リン・マグネシウム・カリウムの四つまで絞れます。株の上、いま伸びている先に出るなら不動側。中ほどや株全体に一様なら部分可動で、硫黄とモリブデンが残ります。見落とすと全体に広がって分からなくなります。
新しい葉だけなら: 動画は鉄の欠乏を、カリブラコアの生長点に出る典型例として挙げます。株の上に出るのは、鉄を古い葉から回してこられないからです。扱いは温室の花き類で、霧も栽培チャンバーも出てきませんが、まず不動側だと絞ってから原因を探す順序は同じで、どんな不調でも最初に根を見るという助言も添えられます。