葉先が茶色く枯れる
株の不調
判定: このまま様子を見る
葉先の枯れは、養液を濃くしても直りません。カルシウムが内側の若い葉まで運ばれていない形です。
どう見えるか
株の内側で伸びかけている若い葉の先だけが、縁から数mmの帯で茶色く縮れます。外側の葉は緑のまま張りがあり、葉が重なる作物では割ってはじめて出てきます。ECもpHも目安の範囲に入ったまま動かず、数字だけでは気づけません。噴霧の側に手がかりがあり、根の部屋がいつ見ても湿っている棚、風の当たらない列から先に出ることが多いところです。
何が起きているか
カルシウムは水の流れに乗ってしか運ばれないので、蒸散の小さい内側の葉には届きません(カルシウムが届かない)。噴霧栽培は根の部屋がほぼ飽和で、根圏の相対湿度が94.5〜96.5%という実測もあります。パネルの隙間から湿った空気が上へ回ると水を引く力そのものが弱まり(蒸散が根の水を引く)、養液のカルシウムを増やしても届きません。
どうするか
まず株の上に空気を通します。噴霧栽培は根の部屋が湿っているぶん、葉の側で空気を動かす意味が大きくなります。温室の水耕レタスでは、毎秒1.0 mの風を1日12時間当てた区で定植28日の傷んだ葉が7%以下、風の無い区は39%でした(Moosavi-Nezhad と Meng 2025)。次に光と養液の濃さを絞って伸びを緩めます。枯れた葉は戻りません。見るのは次に出る葉です。
起こさないために
日中に株の上で空気が動く配置を保ちます。株のまわりの風速の帯を決めてから段の間隔を決めると、後から風を足さずに済みます。定植パネルの隙間をふさぎ、根の部屋の湿った空気が葉の側へ回らないようにします。根が液に埋もれたままにならないよう、噴霧の休止時間も並べて見ます(厚くなった水の膜)。光と養液の濃さは小さく刻んで動かし、伸びだけが急に速くなる変えかたを避けます。
どこまで確かめられているか
カルシウムが蒸散の流れでしか運ばれず、土を使わない栽培で出やすいことは、まとめた論文が整理しています(Birlanga ら 2022、Agronomy)。送風の効き目は温室・1品種・28日の1試験(Moosavi-Nezhad と Meng 2025)。人工光型のロメインで緑色光の比率を上げると発生率が49%から25%へ下がりました(Ruangsangaram ら 2026)。噴霧栽培で測った資料は見当たりません。
解説動画: 【レタスのチップバーン】病気じゃないけど、発生すると見た目が悪くなる。/Kiitos Farm
病気ではない: 動画は、収穫の最中のリーフレタスに出た症状をその場で見せます。葉の先が焼けたようになるのは病気ではなく、株にストレスがかかったときに出る生理障害だと説明します。上のほうの葉は雨が降らなければ乾いているので軽く済みますが、内側は湿気がこもり、焼けたところにカビが入って出荷できなくなる。去年は梅雨明けごろに出たのに、今年は出るのが早かったと話します。
品種で差が出る: 同じ畑でもグリーンカールのほうが出やすく、隣のサニーレタスにはあまり出ていないと言います。育てているのはグリーンジャケットという品種で、その特徴の一番目に発生が少ないと書かれているほどですから、それだけよく知られた障害だということになります。ただし毎年同じ品種を使っているので、比べる相手がいないとも本人が断ります。
診断の値を見る: 原因はカルシウム不足と言われる、と前置きしたうえで、動画は作付け前の土壌診断の結果を開きます。隣のネギ畑の値ですが、石灰分は333mgと比較的多め、pHは6.47でほぼ中性でした。畑は酸性に傾きやすく石灰を撒いて直すものですが、その必要がないと見て今年は入れずに始めています。それでも足りなくなった可能性は残るとしつつ、ほかの理由も並べていきます。
候補は四つある: そこから原因の候補を四つ並べます。単純な不足、乾燥、窒素過多、そしてカリウムの過剰です。乾燥については、梅雨入りが例年より一週間ほど遅く、その前はほとんど雨が降らなかったことを挙げ、根が水と一緒に養分を吸い上げられなかったのではないかと考えます。窒素は診断で多い値ではなかったので窒素過多は考えづらいと見ます。
葉はもう戻らない: カルシウムはマグネシウムやカリウムと拮抗し、どれかが多いと吸収が妨げられると言います。収穫前に殺菌剤と一緒に撒いた液肥がリン酸31・カリウム25だったので、それでカルシウムが入りにくくなった可能性も自分で疑います(カルシウムが届かない)。乾燥かカリウムの過剰と見つつ、焼けた葉は緑に戻らないので、カルシウムを葉面散布や液肥で足すと結びます。