一株だけしおれて戻らない

株の不調

判定: その株を外す

一株だけの不調は、系ぜんぶの入口になります。霧が共有されている以上、待つより外すほうが安く済みます。

どう見えるか

1株だけが昼に垂れたまま、夕方になっても戻りません。翌朝も垂れたままで、葉が内側から黄ばんで薄くなります。隣の株は同じ日に見ても変わりません。抜くと根が茶色から黒に変わり、指でしごくと外側の皮が剥けます。株元は残っているのに、細い根だけが失われています。装置の圧も噴霧の音も、いつもどおりのままです。

何が起きているか

霧と養液は系の全部で共有されています。傷んだ根から出たものは落ちた液と一緒にタンクへ戻り、次の噴霧で全部の株へ回ります。低酸素になった根は膜が傷んで浸出液の中身が変わり、遊走子を引き寄せる向きに働きます。地上の見え方は養分の不足ともよく似ていて、数字だけを見ていると別の手当てへ向かいます。

どうするか

まずその株を抜きます。次に根の色とぬめりとにおいを、根がぬるついて崩れると根の褐変に照らします。そのうえでチャンバーの底と配管をすすぎ、インラインフィルターを洗います。同じ列は数日、多めに見ます。まわりの株も一緒に垂れているなら、これではありません——先に噴霧そのものを疑います(気づいたら霧が出ていない)。

起こさないために

抜いた株の根は、そのつど見る習慣にします。1株の根が、系ぜんぶの今の状態です。循環する液を通す先を作っておくと伝播体は減らせます——温室の土を使わないトマトで、ゆっくり通す濾過がPythiumとFusarium oxysporumの数を減らしました(Picot ら 2020)。養液の温度を上げすぎないことも効きます(養液の温度)。

どこまで確かめられているか

低酸素と根の病気がつながっていることは、まとめた論文がイチゴのNFTについて整理したもので、噴霧栽培で測った話ではありません(Scott と Villouta 2026)。同じ論文は地上部のしおれや黄化が養分不足と取り違えられやすいとも書いています。濾過の効き目は培養して数えた結果です(Picot ら 2020)。1株から何株へ何日で広がるかの実測は見当たりません。

解説動画: 【いちごの病気】炭疽病の葉とランナーの症状と感染予防対策【炭そ病】/Daisuke Miyazaki

見分けは難しい: 動画は、イチゴの葉に出る黒い斑点と、ランナーにできる赤紫色のくぼみを炭疽病の症状として挙げます。ただし似た見え方はジャノメ病などの別の病気や農薬の薬害、ミツバチのふんでも出ると言い、斑点があるだけでは炭疽病だと断言できないと繰り返します。実際、黒く変色したランナーを横の木の棒と擦れただけだと見て外していました。確かめきるにはPCR検査が要ると述べます。

親株から苗へ: 広がり方はふたつあると述べます。ひとつはランナーを伝って親株から子苗へ移る道で、動画の中でも、症状の出た苗をたどると親株の葉に同じ斑点が出ていました。親株が菌を持っていれば、あとからどれだけ予防しても出てしまうと言い、茎頂培養で作ったウイルスフリー苗を親株に使う農園があると紹介します。使わない農園も多いそうです。

水しぶきが運ぶ: もうひとつは水を伝う道です。上からじょうろやホースで水をやると、跳ねた水滴が隣の株へ移り、そこからまた隣へと連鎖すると説明し、実際に散水して飛び散る様子を映します。手当ては点滴チューブや底面給水に替えることで、水滴の行き先を減らします。露地では雨の跳ね返りまでは抑えられないとも断っています。

暑い時期に増える: 発病しやすいのは気温の高い夏で、真冬にはほとんど困らないと述べます。日本では夏に苗を作るので、苗づくりの時期と増えやすい時期がちょうど重なります。近年は夏の暑さが続いて発生が多かったと言い、菌を持っていることと発病することは別で、健全に見えても保有している株はあると付け加えます。

一株から始まる: 動画は、菌を持たない株を親株に使うこと、水滴が跳ねない水やり、殺菌剤の三つで抑えると結びます。苗屋から買った苗に菌が入っていて、そこから作った苗がすべて枯れた例も挙げていました。水や液を分け合う育て方では、最初の一株をどう扱うかがそのまま全体の行方になります。根の側の見え方は根がぬるついて崩れるに並べてあります。