pHと養分の溶けかた
ECとpH
pH が上がると、鉄やリンから先に溶けにくくなります。入れた量は変わらないのに、根が受け取れる分だけが減ります。
何を担う成分・数字か
同じ量を入れても、pH によって水の中での姿が変わります。リン酸はpH 5 ではほぼ全部が H₂PO₄⁻で、pH が上がるほど HPO₄²⁻ の側へ移ります(Trejo-Téllez と Gómez-Merino 2012)。鉄は酸化されると中性よりかなり低い pH でも水酸化物として沈みはじめると、レビューはまとめています(Sambo ら 2019)。
目安の範囲
pH 7 を超えると鉄・亜鉛・銅・ニッケル・マンガンが溶けにくい水酸化物になり、リン酸もカルシウムと結んで減るとレビューは書いています(Sambo ら 2019)。モリブデンだけは向きが逆で、酸性側で取りにくくなります。ただしこれは土壌での吸着をまとめた話で、養液にそのまま当てられるかは別です(Kovács ら 2026)。
動かすと何が変わるか
液を替えずに pH を戻すだけで、欠乏の見た目が薄れることがあります。水耕のヒマワリではpH 5 でわずかな黄化、pH 7 で強い黄化が出たと、総説が 1956 年の実験を引いています(Langenfeld と Bugbee 2025 がまとめた Jacobson と Oertli 1956)。キレートに包んだ鉄でも、pH 6.5 側で葉緑素が下がった報告があります。
測りかたと直しかた
欠乏らしい見た目が出たら、量を足す前に pH を測って戻します。戻しても消えないなら、そこで量の側を疑います。pH計の値が高い側に寄っているなら、原水の成分に残ったアルカリ度を疑います。よく出回る「養分可給性の帯グラフ」は土壌向けに描かれたものです。見え方は鉄とマンガンが効かないときと新しい葉だけが黄色くなるへ。
解説動画: 【酸性土壌】土壌pHが偏るとどうなる?【アルカリ性土壌】/ガーデコジャパン園芸ガーデニングチャンネル
偏るとどうなるか: 動画は畑の土のpHから始めます。酸性寄りを好む植物もアルカリ寄りを好む植物もあるけれど、一般的な植物はpH 6〜6.5の弱酸性を好むと言われている、と置きます。そのうえで、酸性に偏った土とアルカリ性に偏った土のそれぞれの困りごとを分けて話し、最後に土壌改良の方法まで進む、と流れを予告します。
酸性に寄ると: 酸性に寄るとまずリン酸が効きにくくなると述べます。土から鉄やアルミニウムが溶け出し、リン酸と結びついて植物が吸収できない形になるからだと説明します。さらに溶け出したアルミニウムイオン自体が根が伸びるのを妨げるので、養分を取り込む力まで落ちる——つまずきは二重だ、と言います(→根の伸び方)。
アルカリに寄ると: 逆にアルカリ側では、マンガン・銅・鉄といった微量要素が溶け出しにくくなると述べます。光合成に関わる要素なので、欠乏すれば育ちに大きく響くと言います。日本は雨が多いのでもともとアルカリ性の土は少なく、寄る原因の多くは石灰資材の入れすぎだ、と原因の側も添えます(→鉄とマンガンが効かないとき)。
戻すほうの難しさ: 直しかたにも触れ、酸性の土には石灰資材を、アルカリ性の土には酸度未調整のピートモスや硫酸カリのような酸性の肥料を混ぜると述べます。硫酸カリはカリウムが吸われたあとに硫酸イオンが土に残るので下がる、という筋道です。そのうえでアルカリ性の矯正のほうが難しいので石灰資材の入れすぎに気をつけろ、と念を押します。
養液に置き換えて: ここで扱うのは土ではなく養液のpHなので、動画の言う石灰資材やピートモスはそのまま持ち込めません。それでも、pHが偏ると入れたはずの養分の一部が受け取れなくなるという中身は変わらないので、欠乏らしい見た目が出たときに量を足す前にpHを測って戻すという順番につながります。