養液のEC
ECとpH
EC が示すのは、水の中のイオンの多さです。同じ 1.5 mS/cm でも中身の組み立ては違うので、EC だけでは足りているかどうかは決まりません。
何を担う成分・数字か
水がどれだけ電気を通すかを測った値で、溶けているイオンの総量に対応します。どのイオンかは区別しません。微量要素は入れる量が桁違いに少ないため、ECにはほとんど出ないとまとめられています(Trejo-Téllez と Gómez-Merino 2012)。魚の排泄を養分にする系では餌から入った分を読む数字になりますが、この本が扱うのは人が処方して溶かした液の濃さです。単位の行き来は養液の単位と換算にあります。
目安の範囲
コーネル大学のレタスの手引き(2013)は、原水の EC に 1150〜1250 µS/cm を足した値を設定値としています。水耕全般の目安は1.5〜2.5 dS/mです(Trejo-Téllez と Gómez-Merino 2012)。噴霧で育てたツボクサでは、生育の段階ごとに 1.2〜1.9 dS/mと変えた例があります(Lee ら 2026)。
動かすと何が変わるか
上げると溶液の浸透圧が上がり、蒸散が根の水を引く力と競う向きに働きます。塩害の分類ではレタスなど弱い側の閾値が 1.4 dS/m、トマトやキュウリなど中くらいが 3.0 dS/mとされます(Jensen 1980 と Tanji 1990)。もとは畑の塩分についての分類なので、養液の設定値そのものではありません。下げすぎた側は、単純に薄いだけになります。
測りかたと直しかた
EC計で測り、値から原水の成分のぶんを引いて読みます(コーネル大学 2013)。電極は使ううちにずれるので校正液で合わせます。高いときは水を足し、低いときは原液のA液とB液を薄く足すのが基本の戻し方です。足した直後の値ではなく、ひと回りさせてから読み直します。測る時刻と場所を決めておくと、動きの向きが見えます。
解説動画: 【農家】いちごの養液栽培にベストな液肥のECは?【トマトやメロンにも応用可能な肥料の量】/Daisuke Miyazaki
ECとは何か: 動画は、ECを電気の流れやすさを液肥のイオン濃度の代わりに読んだ値だと説明します。1ミリジーメンス毎センチは1デシジーメンス毎メートル、1000マイクロジーメンス毎センチと同じ値です。ECは温度で変わるので、器械は1℃あたり2%の伝導率の変化を見込んで25℃の値に換算して表示している、と述べます。
勧める値は割れる: 次に、いちごの養液栽培で勧められているECを2つ並べます。肥料メーカーの資料は0.6〜1.5 dS/m、栃木県の資料は0.8〜1.2 dS/mを、定植初期・中期・収穫期・後期へ割り振っていました。重ねてみると重なる帯もあれば外れる帯もあり、人によって勧める数字がばらばらだと動画は言います。
ECは量ではない: 柱はECは肥料の量ではないという一点です。度数5%のビールと15%の日本酒のどちらで酔うかは、飲んだ量が分からなければ決まりません。薄くて量の多い液と、濃くて量の少ない液は含まれる肥料の量が同じになり得るので、ECは与えた量とセットでしか読めない、割合だけを勧める助言は聞かなくていい、と述べます。
届く量はそろわない: ECも量もそろえたのに、株が受け取る量は揃わないと続けます。原水の成分のぶんが値に乗り、肥料の配合、培地の種類と量、株間、培地が陽イオンを抱える力、それに1リットルを1回で与えるか5回に分けるかという与え方でも変わる。だから他の農園の数字をまねても同じにはならない、と言います。
器械どうしのずれ: 最後に、値段の違う2台のEC計で同じ液を測ります。片方は1.5ミリジーメンス毎センチ、もう片方は1.2〜1.3と表示され、0.3ほどのずれが出ました。動画は、小数点以下2桁を気にしても器械が違えばこれだけ動くと言い、中性洗剤での洗浄と標準液での合わせ直しが要ると述べたうえで、ECは量とセットで話すところへ戻して結びます。