pH計
測る・制御する
養液の酸性・アルカリ性を測る計器です。同じ肥料でも、pHが動くと吸えなくなる成分が出ます。
何のためのものか
水素イオンの多さを一つの数字にして読む計器です。ここが動くと、肥料の量は同じでも根に届く成分と届かない成分が入れ替わります。目安の範囲は養液のpHの側です。噴霧栽培の研究では、綿を育てた Lin ら 2024 が6.0〜6.5に調整し、ツボクサを育てた Lee ら 2026 は運転中5.92〜6.05で推移したと報告しています。
選ぶときに見るところ
JIS Z 8802 は pH計を携帯用・卓上用・定置用の3種類に分けています。養液タンクに挿しっぱなしにするなら定置用、汲んで測るなら携帯用です。検出部はガラス電極・比較電極・温度補償用感温素子からなり、感温素子を持たない型もあるので、水温が動く場所では補償の有無を先に見ます。ケーブルは手元まで届く長さを選びます。
使いかたと手入れ
電極を乾かしません。JIS Z 8802 は、長く乾燥した状態にあったガラス電極は一夜(例えば12時間)水に浸してから使うとしています。使ったあとは水ですすぎ、水分を拭って保存液に戻します。校正液に当てても値に届かない、表示が揺れて止まらない、落ち着くまでが前より遅い——このあたりが替えどきの合図です。
無いとどうなるか
pHは色も匂いも変えません。計が無いと、肥料は入っているのに吸えない状態のまま、日ごとに動く値を見ないで進むことになります。pHと養分の溶けかたの側へ寄れば新しい葉だけが黄色くなるが出て、根の側では根が茶色く変わると紛れます。上げ下げした量も記録に残らないので、pHの上げ下げが効いたのかどうかも読めません。
解説動画: 【野菜の水耕栽培】なぜpHを測定しないといけないのか?/サラリーマンの水耕栽培
ECには出ない: 動画は水耕栽培の管理項目としてEC・水温・水位・光量を挙げたうえで、今回は養液のpHだと話を移します。pHの変化はEC値には現れないため、ECは変わらないのに野菜が元気でないという相談はここを疑う、と述べます。適正から外れると吸収されにくい成分が出るとして、目安を5.5〜6.5の弱酸性に置きます(養液のpH)。
外れると何が起きる: 動画は成分ごとに見ていきます。リンはpH5〜6で吸収効率が最も高く、7を超えると3割ほど落ち、さらにカルシウムと結びついて沈むと言います。鉄も7以上で吸収が抑えられ、欠乏の側へ寄る。逆にpH5を下回るとマンガンを吸いすぎて過剰の症状が出る、と挙げ、上にも下にも外れる余地があると話します。
試験紙と計器: 測りかたを二つ並べます。試験紙は安く手軽で、浸したあとの色で読むかわりに、中間の色は目で決めることになります。もう一方のpH計は精度が高いものの、校正液をpH4とpH7の二点で当てる校正と、定期の点検が要ると述べます。校正のいらない安価な型は、ざっくりの把握までと断っています。
動く理由は二つ: 動画は値が動く理由を二つ挙げます。ひとつは根の障害で、高温や酸欠で根の一部が腐ると有機酸が出て、pHは低下します。もうひとつは窒素の形で、硝酸態を吸うとpHは上昇し、アンモニア態を吸うと低下すると説明します(硝酸態とアンモニア態)。作物によって好んで吸う形が違うため、同じ肥料でも動く向きが変わる、と続けます。
戻しかたの順: 家庭の大きさなら養液をまるごと入れ替えるのが一番だと述べます。大きい系で調整剤を使うときは、一気に入れると鉄などが沈むため、少し入れて時間をおき、また少しという進め方をすすめます(pHの上げ下げ)。ECが高いと下がり、低いと上がる関係を使って寄せる手も挙げ、pHの管理を徹底してほしいと結びます。