運転する人と乗る人の役割
道案内・飲みもの・音の係を決める。
運転する人と乗る人の役割を先に決めておくと、出発後に迷う場面が減ります。片道1時間ほどのドライブなら、道案内・飲みものと軽食の受け渡し・音の係という3つを、出発前に同乗者へ割り振っておくと組み立てやすいです。順番は、運転する人の手と目を道路から離させる係を先に固め、心地よさに関わる係はそのあとに足すと決めておきます。
道案内の係は、同乗者に渡すのが向いています。視覚的・手動的に複雑な作業をしている運転者は、注意を保っている運転者と比べてニアクラッシュやクラッシュのリスクがおよそ3倍になります(米国の乗用車100台の走行を記録した自然観察調査、バージニア工科大学交通研究所・米国運輸省道路交通安全局、2006年)。カーナビへの目的地入力は、通話よりも視線が道路から離れる度合いが大きく、比べた車載作業の中でもっとも負荷が高い作業でした(複数の車載システムを比べた2017年の実験、AAA交通安全財団)。走行中に運転する人がカーナビへ行き先を打ち込むのではなく、同乗者が地図を見て声で道を伝える形に決めておけば、この作業そのものが運転する人から外れます。
音の係も同じ考え方で割り振れます。ラジオの選局も、通話より視線が道路から離れる度合いが大きい作業でした(前出の2017年の実験)。選曲や選局は同乗者が担い、運転する人には曲名だけを伝える形にしておくと、走行中に画面を見る回数が減ります。音楽ではなく話す時間を選ぶ同乗者には、哲学的な問いで語り合うや昔話・思い出語りのように、運転する人が短く答えるだけで続く話題を先に決めてもらうのが向いています。子ども連れならなぞなぞ・クイズを出し合う、ふだん話さない相手との移動なら価値観を深掘りする質問やもしもトークで妄想することも、出す側が同乗者であれば運転する人の負担になりません。
飲みものと軽食の係は、受け渡しの手間を運転する人から外す係です。視線を道路から外した時間の合計が2秒を超えると、通常の運転より少なくとも2倍のリスクになります(前出の2006年の調査)。ふたの開け閉めや取り出しに手間がかかる物は同乗者が先に済ませ、運転する人には開いた状態で手渡すだけにしておくと、片手で物を探す時間が積み重なりません。
初めてのドライブでやりがちな失敗は、3つの係を全部運転する人が兼ねてしまうことです。道案内も選曲も飲みものも自分でこなそうとすると、短い作業のつもりでも視線の逸れる時間が積み重なり、合計の逸れる時間は気づかないうちに伸びていきます。出発前に3つの係を同乗者へ割り振り、走行中に運転する人が持つのはハンドルとペダルだけと決めておくと、当日に役割を決め直す手間も減ります。
