皆既月食
食と掩蔽
月の全体が地球の本影に入っても、真っ暗にはなりません。地球の大気を回り込んだ波長の長い光が影の中へ届くため、多くの場合は赤銅色に染まった月が残ります。
何が起きているか
太陽と地球と月がこの順に並び、月の全体が地球の本影に入る現象です。本影は太陽の光が地球にすべて遮られてできる影で、月の距離では月の視直径のおよそ2.5倍の広さがあります。それでも月が消えないのは、大気を通り抜ける間に屈折した波長の長い光が本影の中へ回り込むためで、国立天文台「月食」もこの筋道で説明しています。一部だけ入る場合は部分月食です。
いつ、どちらの空か
起きるのは満月の夜だけで、月が空に出ている地域なら同じ時刻に同じ姿が見えます。欠け始めから終わりまでは3時間を超えることがあり、全体が影に入っている状態も長い食では1時間以上続きます。方角は決まっておらず、その夜に月が出ている側を追います。月の出の前や月の入りのあとに進む部分は、その地域からは見られません。
目にはどう見えるか
色と明るさの移り変わりを、道具なしでそのまま追える数少ない現象です。欠けていく間は影の縁が月面を横切るだけですが、皆既に入ると月面が赤銅色に沈み、それまで月明かりに消えていた周りの星が見え始めます。同じ赤さが毎回出るわけではなく、大気の濁りしだいで暗い灰赤色から明るい橙色まで振れます。双眼鏡では面の中の濃淡が分かれます。
見のがす条件
雲はもちろん、食の時間に月が地平線の下にある地域では、何も起きないまま夜が過ぎます。低い空で進む食は大気減光で色が沈み、赤銅色が茶色にしか見えないこともあります。皆既の前後は残った明るい部分に目が引かれるので、欠けた側の色を見るには明るい縁を視野の端に外すほうが分かります。日食は昼の現象で、この本では扱いません。
どのくらいの間隔で起きるか
月食は、満月が月の通り道と太陽の通り道が交わる点の近くに来た回だけ起こります。そのうち全体が影に入るのは月が本影を深く通る食に限られるので、部分でとどまる食のほうが回数は多くなります。同じ並びは18年と11日ほどのサロス周期で戻りますが、地球のどこが夜かがずれるため、毎月のように起きる星食と違って同じ場所では数年に一度です。