契約書と発注書
契約と責任
条件を紙に残すための最小限の書類
どういう決まり?
契約書は取引全体の約束、発注書は一件ごとの条件を書いた紙です。副業では毎回契約書を交わすとは限らず、最初に基本となる契約を結び、あとは案件ごとに発注書で進める形がよく使われます。金額と納期と成果物と支払日が書いてあれば、簡素な様式でも十分に働きます。押印の有無より中身です。
何が問題になるか
何も残さずに始めると、言った言わないの争いになります。実際に困るのは、報酬が振り込まれないとき、修正が終わらないとき、途中で中止になったときで、いずれも最初の合意がないと交渉の足場がありません。書面がないこと自体を口実に支払いを渋られる例もあります。
どう備えるか
先方から書式が出ないなら、自分から確認のメールを送ります。作業の範囲と金額、納期、支払日を並べてこの条件で進めますと書き、返信をもらえば記録になります。押印がなくても合意の経緯が残っていることに意味があります。請求の実務は請求書の出し方に。
確認先
取引条件を書面や電磁的方法で示す義務が発注側にある場合があり、フリーランスを守る法律で扱いました。ひな形は中小企業庁や公正取引委員会が公開しています。業界の慣行を鵜呑みにしないでください。告示や様式は改定されますので、着手の前に最新版を確認します。
解説動画: 業務委託契約書の作成方法!7つのポイントと契約条項の工夫例などを弁護士が解説します。/弁護士 西川 暢春 - 弁護士法人咲くやこの花法律事務所
契約書の骨格は二つだけ: 業務委託契約の書面の骨格は、どんな業務を委託するかと、それに対する報酬がいくらか——この二つだと弁護士は言う。トラブルの元になるのはたいてい前者で、業務の中身が具体的に書かれていない契約書が非常に多い。清掃・保守・コンサルティング・営業代行・店舗運営・運送・製造と種類は幅広い。以下は委託する側から見た注意点。
業務の範囲をどこまで書くか: システム保守を頼むなら、対応時間だけでなく不具合の原因調査までなのか、修正と復旧まで含むのかを書き分ける。とくにセキュリティのアップデートが範囲に入るか。ここが曖昧だと、情報漏洩が起きたときに責任がどちらにあるか決まらない。製造なら製品の仕様に加えて、検品・保管・納品後のメンテナンス・補修部品を何年供給するかまで書いておく。
支払い時期と中間金の決め方: 単発の仕事では、いつ払うかが効いてくる。完了検査に合格してから支払う形にすると、頼む側は前払いよりリスクが小さい。着手時・中間・完成時と分けるなら、中間金の期日を「何年何月何日」と日付で決めないこと。日付だと、作業がほとんど進んでいなくても支払日のほうが先に来てしまう。「どこまで出来た時」という到達点で書くよう勧めている。
賠償を狭める条項に注意: 契約書によくある賠償は重過失の場合に限るという書き方は、法律のルールより狭い。普通の過失があれば賠償を求められるのが本来なので、この表現は避けるべきだという。賠償額の上限を報酬額までとする条項も、情報漏洩や知的財産権の侵害では上限を超えた分が委託した側に残る。「直接の損害に限る」「逸失利益は含まない」も同じく権利を狭める書き方だ。
下請法と3条書面: 資本金1000万円超の会社が、それより資本金の小さい会社や個人事業主に、製造・修理・プログラムやコンテンツの作成などを頼むと下請法がかかる。すると支払いは納品やサービス提供から2か月以内が義務になり、下請法3条が定める事項を書面で伝える義務も生じる。契約書に書かないなら発注書などの書面で渡す。さらに代金の減額は下請け先が同意しても禁止、仕様どおりの納品をやり直させるのも処分の対象になる。