香り

味・香り

「香り」は、何を指すかで測る成分が変わる言葉です。

言われていること

炊きたてのよい香りはおいしさの印として語られ、古米はにおいでわかるのように、劣化の側でも同じ語が使われます。米穀店の案内では精米時期の新しさと結ばれ、品種の紹介では香り米の話として出てきます。炊飯器の広告でも、香りが立つという言い方がよく置かれます。家では、米びつの米がにおうときの手がかりにもなります。

測るとどうか

国際農林水産業研究センターは、香り米の2-アセチル-1-ピロリンを同位体希釈法とガスクロマトグラフ質量分析計で定量しました。タイ東北部産のカオドマリ105 の精米で、含量は286ppbです。劣化の側では、三宅ら 2012 が古米の臭気成分11種を調べ、ヘキサナールが総臭気量の約45%を占めたと報告しています。

誰が・何を・どう測ったか

香り米の定量は国際農業研究成果情報1999年の報告です。重水素標識体を内部標準にした同位体希釈法で、試料は50mgから、熱抽出のあと単一イオンモニタリングで測っています。三宅ら 2012 は精米歩合70%の古米20gを水に2時間浸し、洗米でヘキサナールの臭気量(トルエン相当)が94.0から53.9ppbへ下がりました。どちらも測ったのは成分で、香りのよさではありません。

だからどうする

何の香りの話かを先に分けます。炊きたての香ばしさと、ヘキサナールが増える古いにおいは別の成分の話です。においが気になるときは、米を保存する温度から手を付け、米びつの米がにおうのほうも確かめます。香り米を試すなら、ジャスミンライスのような品種として選びます。どの香りを好むかは人によって違うので、言葉のままでは比べられません。

まだ分かっていないこと

炊きたての香りの強さと、人が答える「香りがよい」の評価を結んだ公開データは確認できていません。早川ら 2025 は香りの言葉を23語に整理しましたが、語ごとに対応する成分までは示されていません。香り米の2-アセチル-1-ピロリンは品種の話で、日本のうるち米の炊飯で同じ成分がどこまで関わるのかも分かっていません。

出典

  1. 公的機関 国際農林水産業研究センター 生産利用部(1999) 香り米中の香り成分の定量法(国際農業研究成果情報 No.7)
  2. 論文 三宅剛史 ら(日本食品科学工学会誌 59巻6号)(2012) 食塩水を用いた洗米による脂肪酸および古米臭の低減
  3. 論文 早川文代 ら(日本食品科学工学会誌 72巻6号)(2025) 米飯の官能評価用語体系の構築