シュウ酸カルシウムの針状結晶

汁と樹液

痛みの正体は毒ではなく、形です。サトイモ科の汁に含まれる針のような結晶が皮膚と粘膜に機械的に刺さるため、触れた直後からヒリつきます。

どんなことが起きるか

汁の付いた指先に、触れてすぐチクチクとした痛みと赤みが出ます。日本皮膚科学会『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』の表13は、サトイモ科を機械的刺激の列に置いています。針状の結晶が束のまま細胞から飛び出し、皮膚に細かい傷をつくるためで、成分が体に効くのではなく、形が効きます。唇や舌に付いたときの痛みははるかに強く、粘膜では数分でしびれるような感覚に変わります。手のほうは洗えば数時間で薄れることが多い反応です。

原因になる植物

入口はサトイモ科の葉柄と地下茎を切った切り口です。花壇のカラー、庭先のクワズイモ、林縁のミミガタテンナンショウ、鉢から植え込みへ広がったポトスが並びます。厚生労働省『自然毒のリスクプロファイル』もクワズイモとテンナンショウ類の項でこの結晶を挙げ、サトイモの葉柄を切った手がかゆくなるのも同じしくみです。結晶を持つのは科ぐるみの性質で、名前の分からない鉢植えでも、切り口から透明な汁が糸を引くなら同じ扱いにします。

その場でどうするか

こすらずに流水で洗い流します。結晶は刺さった異物なので、こすればさらに深く押し込むことになります。石けんで汁の粘りごと落とし、洗ったあとに冷やすと痛みが引きやすくなります。皮膚の症状は数時間で薄れるのが普通で、その間に掻き壊さないことが要になります。目に入った場合は汁が目に入ったときの順番へ移り、口に入った場合は子どもが実を口に入れたときを見ます。

受診の目安

痛みと赤みだけなら数時間で薄れます。水疱ができた、半日たっても痛みが強い、腫れが指の関節を越えて広がるときは皮膚科にかかります。口に入って唇や舌が腫れ、声がかすれる場合は気道が狭くなるおそれがあり、待たずに受診します。判断に迷うときは公益財団法人日本中毒情報センターの中毒110番(大阪072-727-2499、つくば029-852-9999)が365日24時間受け付けています。

起こさないために

汁の出る切り口に素手で触れないことに尽きます。植え替えや刈り込みではニトリル手袋を着け、袖口へ汁が流れ込まないよう前腕まで覆います。切ったハサミの刃にも結晶は残りますので、作業の終わりに拭き取ります。手に付いたまま目や口へ触れるのが最も痛い経路なので、鉢を動かしたら先に手を洗います。室内の鉢は子どもと動物の手が届かない高さへ置き換えると、口へ入る経路が減ります。