掲示の数字は今の浴槽の湯?
表示の誤解
掲示の成分は、源泉から採った湯を分析した値です。温泉法施行規則第10条が並べる項目のうち、浴槽の側を指しているのは温度の二つ目だけで、成分の数字は源泉の湯を測っています。
よく言われること
壁の分析書を読み上げて、目の前の浴槽の湯の話として受け取る読み方です。ナトリウムが何mg、pHがいくつ、泉温が何度と並んでいるので、いまつかっている湯の中身が、そのまま書いてあると考えます。紙の数字を持ち出して湯の濃さを比べる話も、掲示の泉温をそのまま湯加減として読む受け取り方も、ここから出てきます。泉質名や液性の語まで、いまの湯の手ざわりの説明として読まれます。
実際はどうか
温泉法第18条第1項と施行規則第10条が並べる掲示事項のうち、成分は登録分析機関が源泉から採取した湯を分析した値です。温度だけが「源泉における温度」と「公共の浴用又は飲用に供する場所における温度」の二つに分かれて書かれ、採ったところと使うところが別でありうることを、様式そのものが認めています。温度の欄が二つあること自体が、二か所を測り分けている印です。
なぜ広まったか
掲示が貼られるのが、脱衣所や浴室の入口だからです。数字の紙と湯船が数歩の距離にあり、同じ湯のことを書いた紙として読まれます。加水・加温・循環ろ過・入浴剤の添加や消毒の表示は施行規則第10条第2項の別の項目で、紙や枠が分かれていると、二つは結びつかないまま読まれます。利用状況の表示は様式が別で、入口や番台の脇など離れた場所に貼られることもあります。
どう言えば正しいか
「成分は源泉の値、温度は源泉と浴用に供する場所の二つ」と分けて読みます。浴槽まで来た湯が変わる例は、指針の側にも書かれています。鉱泉分析法指針 第1-1表の総鉄イオンの注記は、浴槽では総鉄イオンの半分以上が鉄(Ⅲ)になることもあると添えています。差の出どころは温泉の利用状況の表示の欄に、温度の読み分けは泉温と気温に書いてあります。良し悪しの話ではありません。