上屋抽梯
先に梯子を掛けて上らせ、退路を断つ計。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
計の順
第二十八計
読み
じょうおくちゅうてい
意味
相手に足場を与えて前に出させ、退路を断つ計。解語は順を追って言う。便宜を与える。唆して進ませる。後ろの支えを断つ。逃げ場の無い所に落とす。計に付いた解説は、梯子を抜くには先に梯子を置くか見せる必要があると説く。利で誘っても、足場が無ければ人は進まないからである。
名前のもとになった故事
計名は「屋に上げて梯を抽く」と読む。近い場面が『三国志』諸葛亮伝にある。劉表の長子の劉琦は、身の守り方を諸葛亮に尋ねたが、答えてもらえなかった。劉琦は高楼に共に上り、宴の間に梯子を外させて、ここなら話せるかと迫った。計に付いた解説は別の例を引く。苻堅に晋攻めを勧めた慕容垂らである。
見分け方
将棋で、相手が駒をただで取らせてくれるときに思い出す。取りに出る前に、出た駒の戻り道と、後ろの駒が続くかを確かめる。進む道だけが空いていて戻る道が無ければ、誘いである。
よくある誤解
字面からは、上らせた後で梯子を外す仕打ちだけが目に入る。解語の前半は、便宜を与えて進ませることである。計に付いた解説も、先に梯子を置くことに重みを置く。孫子の九地篇では、似た喩えが自軍の兵を退けなくする意味で使われる。
計名と解語(原文と書き下し)
上屋抽梯。「假之以便、唆之使前、斷其援應、陷之死地。遇毒、位不當也」(之に仮すに便を以てし、之を唆して前ましめ、其の援応を断ち、之を死地に陥る。毒に遇うは、位当たらざればなり)。
故事と成立の確かさ
『三国志』諸葛亮伝の句は「共上高樓…令人去梯」で、計名の四字は無い。『孫子』九地篇の「如登高而去其梯」は、将が自軍の退路を断つ喩えである。解説の例は『晋書』巻一一四にあり、慕容垂・姚萇らが常に呉の平定を説き、敗戦後に背いたと書く。維基文庫の注が挙げる巻一一三に、当たる文は見当たらない。計名の出どころは確かめられなかった。解語の結びは周易・噬嗑卦の象伝と同じ句である。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 並戰計
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷三十五 蜀書 諸葛亮傳
- 資料・中国語 維基文庫 十一家注孫子 九地篇
- 資料・中国語 維基文庫 晉書 卷一百十四 載記第十四(苻堅下・苻融)
- 資料・中国語 維基文庫 晉書 卷一百十三 載記第十三(苻堅上)
- 資料・中国語 維基文庫 周易 噬嗑
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