金蝉脱殻
陣の形だけを残して、中身を別の所へ移す計。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
計の順
第二十一計
読み
きんせんだっかく
意味
陣の見た目と勢いをそのまま残し、中身だけを動かせ、という計。解語は、味方は疑わず、敵は動かない、と言う。計に付いた解説は、ただ逃げる計ではないと断る。旗と太鼓を元の陣に残して精鋭を抜き、別の敵を討って戻る「分身」の法だとする。
名前のもとになった故事
計名は「金蝉、殻を脱ぐ」と読む。蝉が殻を残して飛び去る姿である。元代の語り物『三国志平話』では、呂布に追われた孫堅が、上着と鎧を木に掛けて逃げる。本文は「金蝉蛻殻の計」と呼ぶ。計に付いた解説が挙げるのは別の二つで、諸葛亮の死後の蜀軍の退却と、南朝宋の檀道済の退却である。
見分け方
手品を観ていて、箱や布が舞台に残り、演者がそちらを長く見せるときに思い出す。見る所は、残された形ではなく、中身を最後に確かめた時点である。対戦ゲームでも、同じ並びのまま動かない陣は、偵察を出して確かめる。
よくある誤解
ことわざとしては、見せかけを残して上手に抜け出すことを指す(台湾の教育部『成語典』)。計に付いた解説は、ただ逃げる計ではないと言い、精鋭を抜いて別の陣を襲う法とする。ただ、解説が挙げる二つの例は、どちらも退却である。
計名と解語(原文と書き下し)
金蝉脱殻。「存其形、完其勢、友不疑、敵不動。巽而止、蠱」(其の形を存し、其の勢いを完うす。友疑わず、敵動かず。巽にして止まるは、蠱なり)。
故事と成立の確かさ
『三国志』孫堅伝では、孫堅は赤い頭巾を部下の祖茂に被らせ、董卓の騎兵から逃れる。木に掛けた鎧の話は無く、平話の筋は正史と違う。諸葛亮の死後の退却は、本文ではなく裴松之の注が引く『漢晋春秋』にある。檀道済が白い服で輿に乗り、ゆっくり外へ出た話は唐の『南史』にあるが、先に成った『宋書』の伝は「全軍而反」と書くだけである。どの史書にも計名の四字は無い。解語の結びは易の蠱の卦の彖伝にある句である。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 混戰計
- 資料・中国語 維基文庫 周易 蠱
- 資料・中国語 維基文庫 全相平話 三國志平話卷上
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷四十六 吳書 孫破虜討逆傳(孫堅)
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷三十五 蜀書五 諸葛亮傳(裴松之注引『漢晉春秋』)
- 資料・中国語 維基文庫(李延壽) 南史 卷十五(檀道濟傳)
- 資料・中国語 維基文庫(沈約) 宋書 卷四十三(檀道濟傳)
- 公的機関・中国語 中華民國教育部(2020) 成語典 金蟬脫殼
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