奇襲
戦場で起きること
篇: 第三篇
奇襲は、相手の不意を突くことがどれほどの効果を持ちうるか、また実際にはどれほど成し遂げにくいかを説く章。
『戦争論』のどこにあるか(篇と章)
第三篇第九章「奇襲」。数的優越を扱う第八章のすぐあとに置かれる。
原語と原文
「Schon aus dem Gegenstand des vorigen Kapitels, dem allgemeinen Streben nach relativer Überlegenheit, ergibt sich ein anderes Streben...」(前章の主題である、相対的な優越を得ようとする一般的な努力そのものから、もう一つの努力が生まれる……)。
クラウゼヴィッツの言っていること
原文は、前章で述べた数の上での優越を得ようとする努力の延長として、相手の不意を突くことで実質的な優越を作り出そうとする働きを位置づける。そのうえで、戦術の場面では奇襲は比較的成し遂げやすいが、より規模の大きい戦略の場面では、動きの遅さや情報の伝わりにくさから、奇襲を成功させることはずっと難しくなると述べる。
研究者の間で読みが割れるところ
奇襲の効果について、この章がどこまで楽観的か懐疑的かは、訳や解釈によって印象が異なり、研究者の間でも力点の置き方が分かれる。奇襲を勝敗を決める独立した要因として重く見る読み方と、あくまで数的優越を補う副次的な要素として見る読み方があり、どちらが原文により近いかは確かめきれない。
よくある引用とのずれ
「奇襲さえ決まれば勝てる」という趣旨で広められることがあるが、原文はむしろ、規模の大きい戦略の場面では奇襲は成し遂げにくく、単独で勝敗を決める要因というより、他の条件と組み合わさって初めて意味を持つものとして扱っている。