詭計

戦場で起きること

篇: 第三篇

詭計は、敵を欺く工夫が実際の戦争ではどれほどの重みを持つかを、抑えた調子で検討する章。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第三篇第十章「詭計(Die List)」。奇襲を扱う第九章のすぐあとに置かれる。

原語と原文

「Zehntes Kapitel: Die List」(第十章 詭計)。英訳(J. J. Graham, 1873年)はこの章の趣旨を、詭計にまつわる資質について「these qualities show themselves but little in history, and have rarely been able to work their way to the surface from amongst the mass of relations and circumstances.」(こうした資質は歴史のうえにはほとんど現れず、無数の事情の中から表に出てくることはめったにない)と表している。

クラウゼヴィッツの言っていること

原文は、詭計を、相手に誤った状況判断をさせることで自分に有利な結果を引き出そうとする働きとして位置づける。そのうえで、実際の戦争においてはこうした企てが記録に残るほど頻繁にも大きくにも成功するわけではなく、むしろ限られた場面でしか実を結ばないという、やや抑えた評価をこの章は示している。

研究者の間で読みが割れるところ

クラウゼヴィッツが詭計をどの程度重視していたかは、章の分量の少なさや書きぶりから研究者によって読み取り方が分かれる。数の優越や道徳的な力を重視する他の章と比べて詭計の扱いが小さいことをどう説明するかについても見方が分かれ、確かめきれない。

よくある引用とのずれ

詭計や欺きを重んじる兵法の伝統と並べて、クラウゼヴィッツも同じように詭計を戦争の中心に据えたと紹介されることがあるが、この章での扱いはむしろ抑制的で、詭計だけで戦局を動かすことは難しいという評価に重心がある。