心配を書き出す

注意を戻す

本番の直前に、不安に思っていることを書いてみる

どんな技?

本番の直前に、いま不安に思っていることを10分ほど紙に書き出します。書式は自由で、誰にも見せない前提にして体裁も整えません。試験や面接の直前に一度やる使い方で、毎日の日記とは別のものです。道具は紙一枚と鉛筆だけで、机の上でも会場の廊下でも書けます。効くかどうかは結果が割れているので、効き目を当てにせず試す形になります。

なぜ効くのか

不安なことを頭の中で回し続けると、作業記憶の一部が心配のために使われるという説明が置かれています。書き出して外に出せば、そのぶんを目の前の問題に回せるという筋です。ただしこの入れ替わりを直接測った結果は乏しく、しくみの話として置かれている段階です。成績が上がると書けるほどの裏づけはありません。その通りなら、不安が強い人ほど余地が大きいことになります。

やり方

本番の10分前に紙を1枚用意し、いま気になっていることを思いつく順に書きます。文章にならなくてもよく、途中で手を止めないことだけ守ります。書けたら見返さずに閉じて会場に入り、紙はあとで捨ててかまいません。合う合わないは人によるので、一度試して手応えを見るまでにします。緊張そのものを下げる手当てはゆっくり呼吸するの側です。

はまりどころ

有名な1本と、それを再現できなかった1本があり、いまのところどちらとも言えません。効くと書けないのと同じで、効かないとも言えない位置にあります。書いたあとに気持ちが乱れる人もいるので、大事な本番でいきなり試すのは避けます。不安がひどく生活に支障が出ているなら、専門家に相談する範囲です。研究が割れているときの読み分けは再現性にあります。

確かめられ方

Ramirez と Beilock が2011年に報告した実験では、試験直前に10分書いた群の成績が上がり、不安が強い学生でとくに差が大きくなりました。Myers らが2021年に実際の授業の試験4回で同じ手続きを試したところ、不安も成績も変わりませんでした。どちらも学生を対象にした研究で、結果は割れたままです。

解説動画(海外・英語): How Writing Reduces Anxiety | Dr. Ethan Kross & Dr. Andrew Huberman/Huberman Lab Clips

内なる言葉の渦: 自分へ向かう言葉が悪いほうへ傾き、同じ問題を回すだけで進まない状態を、対談は「チャッター」と呼びます。頭の中の言葉はどこへでも散らばるもので、その散らかりよう自体がつらさの一部になっている、という見立てです。書くという行為は、そこへ手を入れる道具として持ち出されます。

文にすると形が入る: 書くときは文の形にせざるを得ないので、考えのほうに構造が入り込みます。話すのも似ていて、頭の中の飛び方のまま口に出しても相手には通じませんから、自然と筋道が要ります。目を閉じて完全な文だけで考え続ける人の話も出ますが、試すと流れが枝分かれし、文で考えるのは既定ではないと語られます。

考えるより書く: 研究の話が挟まります。嫌な出来事を思い出してもらったうえで、頭の中で考える、書く、人に話すのどれかへ対照群とランダム化の形で振り分けると、終えたあとの気分は書いた側と話した側のほうが良かった、というものです。頭の中だけで進めると手すりが無い、というのが説明で、書き方には習った作法があるのに考え方には何も無い、と付け加えられます。

人によって違う: 自分たちの調査も紹介されます。感染症が広がった時期に、その日どの手当てを使ったかを記録してもらう大きな調査を二つ。分かったのは、効く道具が人によってまるで違うことと、一つだけで済ませる人はまれで平均して三つか四つを組み合わせていたことでした。運動で同じ一か所ばかり鍛える人はいない、という例えが添えられます。

使う人は少ない: 対談の相手は、朝に頭の中が少し散らかっていると感じる日があり、音楽や書くことで立て直すと明かします。書き出しは、使った人についてはその時期の不安を動かしました。ただし使う人の少ない道具で、理由はそれなりに手間がかかるからだろうと述べます。お気に入りの一つは持たないとも語られ、書き出しは効き目の保証ではなく自分に合うか一度試す道具として置く見方と重なります。