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注意を戻す
中断する前に、次の一手を書いてから離れる
どんな技?
中断が来ると分かった瞬間に、次にやることを一行だけ書いてから離れます。「この式の分母を直す」のように動詞で終わる書き方にします。状況を全部メモするのではなく、再開の一手だけです。実験では、中断の直前に数秒の猶予があるだけで再開が速くなりました。声をかけられた場面でも、返事の前に一行書く余裕はたいてい作れます。
なぜ効くのか
中断で消えるのは資料の中身ではなく、何をしようとしていたかの側です。目標は作業記憶の中で時間とともに薄れるもので、外に書いた一行がその薄れを補います。手がかりがあると、どこまでやったかを探し直す手間なしに続きから始められます。逆に手がかりが無いと、出だしで探す時間が積み上がります。資料を開き直すだけでは、この手がかりの代わりになりません。
やり方
中断の気配(電話、声かけ、席を立つ用事)が来たら、手を止めて一行だけ書きます。かかるのは10秒ほどです。書く場所は画面の同じ隅か紙の同じ位置に固定します。戻ったら、その一行から読むのを最初の動作にします。日をまたぐときは、続きの一手に加えて開いていた資料の名前も足します。予定そのものを外へ出す話は思い出させる仕掛けを外に置くの担当です。
はまりどころ
書くのに手間をかけるほど、中断そのものが長くなります。一行を超えたら書きすぎで、状況の説明は再開の役に立ちません。実験で測られたのは画面上の課題なので、人との会話に秒数をそのまま当てはめることはできません。割り込みを断る交渉のしかたは、この図鑑では扱いません。移る前の区切り方は切り替えの残りかすと重なります。
確かめられ方
Trafton らが2003年に行った実験では、中断の直前に8秒の猶予を与えると再開が速くなりました。Hodgetts と Jones の2006年のロンドン塔課題、Monk らの2008年の実験も同じ向きで、Altmann と Trafton が2002年に出した目標の記憶のモデルがこれを説明します。ただし材料は画面上の課題で、日常の作業で何分得するかは換算されていません。
解説動画(海外・英語): What Makes Interruptions Disruptive? A Process-Model Account of the Effects of the Problem State .../ACM SIGCHI
何をしていたか: 発表者は、中断がなぜ邪魔になるのかを頭の働きの側から調べています。発表資料を作っていた日に窓の清掃が入って席を立ち、10分後に戻った瞬間の「何をしていたんだっけ」が出発点です。中断と再開を計算で動く模型にすれば、その中断がどれだけ邪魔になるかを課題の性質から見積もれると述べます。
分かっている三つ: 研究にははっきりした効果が三つあると整理されます。中断が長いほど戻りにくいこと、中断してくる用事が複雑なほど戻りにくいこと、そして作業の途中、とくに小さな手順の途中で止められるほど戻りにくいことです。なぜそうなるのかを、模型で説明できるかどうかが話の中心になります。
目標が薄れる: 古い録画機の予約を組む課題では、中断のあいだ何もしない条件で再開までおよそ1.3秒、中断が長いほど少しずつ伸び、覚え続けが要る中断課題では伸び方が急になりました。これを説明するのが目標の記憶という模型で、作業ごとの目標が中断とともに記憶へ移されて活性を失う、と考えます。
途中の答えの席: 発表者は別の見立てを出します。3x引く6が12なら3xは18、というような途中の値を置ける席は一度に一つで、中断してくる用事も同じ席を要ると、こちらの値は作業記憶の奥へ押しやられます。戻るには取り出して置き直す時間が要り、それが再開の遅れになる、という筋です。
区切りで離れる: この筋は二つの実験で試されます。繰り下がりのある引き算や、消えた単語を覚えたまま打つ課題のように途中の値を抱える版でだけ、中断が長くなるほど再開が遅れ、易しい版では遅れが出ませんでした。段落の終わりのように抱えるものが無い時点で離れるほうが戻りやすい、という結びは、離れる前に外へ出すものを決める手がかりになります。