気がそれたと気づく

注意を戻す

注意が離れたことに気づいて、そのつど連れ戻す

どんな技?

読んでいる途中で中身から離れたことに気づいたら、そこで元の行へ戻すだけの技です。気づくまでの間が長くても、気づけたこと自体を成功の側に数えます。練習としては、呼吸に注意を向けておき、離れたら戻すやり方が知られています。作業中は離れた回数を紙の端に印で残すと、自分がどのあたりで抜けるかが見えてきます。特別な道具や場所は要りません。

なぜ効くのか

注意が離れるのは故障ではなく、黙っていても起きることです(うわの空)。だから技の側は離れないようにするのではなく、離れたと気づく回数を増やす形になります。離れている間の文章は、目で追った形をしていても中身がほとんど残りません。いま自分が何をしているかを見張るメタ認知が働くほど、戻る判断は早くなるという説明です。ただし報告されている効果は小さい範囲にとどまります。

やり方

3分から10分の幅で、呼吸に注意を向けて離れたら戻す練習を、日をまたいで続けます。作業中は気づいた時点で一行だけ書き足してから戻ると、続きを拾い直す手間が減ります(しおりを残す)。浮かんだ別件はその場で片づけず、浮かんだ別件を逃がすの形で外へ出します。数を記録するのは最初の数日で足り、あとは気づいたら戻す動作だけが残ります。

はまりどころ

効き目を大きく見積もらないほうが、続けるうえでは安全です。眠気や空腹が元で離れている日は戻す練習では埋まらないので、先に体の側を整えるほうが早く済みます。気がそれる回数は日によって大きく揺れるため、数が減らないこと自体を失敗と読む必要はありません。離れた自分を責める方向へ向かうと、練習のほうが先に途切れます。呼吸の数え方や体の変化はゆっくり呼吸するの担当で、ここは戻す練習だけの話です。

確かめられ方

Verhaeghen が2021年に出したメタ分析は、注意の成績を対象に介入を40研究109効果量、長期の実践者を18研究59効果量で整理しています。扱われたのは注意の課題の成績で、効果はいずれも小さい範囲でした。何もしない待機群と比べたときより、別の活動をした対照群と比べたときのほうが効果は小さく、待機群との比較だけでは効き目を見積もれません。

解説動画(海外・英語): If your attention span has been hijacked, here’s how to take it back. | Amishi Jha/Big Think

注意が支える三つ: 動画はまず、注意を考える・感じる・つながるの三つを支える働きとして置きます。考えるとは浮かんだ考えを別の考えへつないでいくことで、そのつなぎ目にあたるのが注意だと述べます。うれしい出来事も、そこへ注意が向いていなければ受け取り損ねます。人に注意を向けることは、その相手を気にかけることそのものだとも言います。

注意が弱るもの: 強い働きである一方で、注意はもろく傷つきやすいとも述べます。研究室で分かってきた弱点として挙がるのは、ストレス・脅威・沈んだ気分の三つです。どれも避けて暮らせるものではありません。高い成果を出している人たちからも、いちばん必要なときに注意へ手が届かないという声が出ており、移り変わりが速く先の読めない今の環境がその場面だと続けます。

注意は商品になる: もう一つの相手として、注意を集めるために作られた仕組みが挙がります。脳はもともと脅かすもの・目新しいもの・自分に関わるもの、それに面白そうなものへ引き寄せられる作りだと説明します。そこを狙って作り手が並び、注意そのものが商品として扱われている、というのが動画の見方です。

半分は今にいない: 三つ目に出てくるのが心の時間旅行です。過去のことを考えているとき注意はまるごと過去にあり、未来でも同じことが起きます。起きている時間のおよそ半分は、今この瞬間にいないと述べます(うわの空)。数字だけ聞くと打つ手が無いように思えますが、動画はここから戦わずに済むやり方へ話を移します。

気づいて戻すだけ: 挙がるのは、今この瞬間へ注意を向ける練習です。1日12分以上続けると、心の中で何が起きているかをそのつど見て取る力が育つと述べます(メタ認知)。自分の注意へ注意を向ける形で、気づけるほど扱える幅が広がるという説明です。心が離れるのは脳が自然にやることだから、離れたらそっと戻して、また始める——ここで締めます。