水撃

音と衝撃

蛇口を急に閉めたときに管が鳴る現象

どんな現象?

勢いよく流れていた水を急に止めると、管の中でドンという音と振動が起きます。洗濯機や食器洗い機のように一秒足らずで閉じる仕掛けで起きやすく、壁の中や床下でガタガタと続けて鳴ることもあります。繰り返すうちに継ぎ目がゆるみ、水漏れの原因にもなります。

なぜ起きるか

管の中の水は、長い列車のようにひとかたまりで動いています。出口が急に閉じると弁のすぐ手前だけが急に止められ、後ろの水はまだ進んでそれを押し縮めます。縮められた水は強く押し返し、その高い圧力の山が上流へ波となって走ります。波は広い所で跳ね返って戻り、何度も往復しながら管を内側から叩くので、音と揺れが尾を引きます。

どこで見られるか

集合住宅の給水管、全自動洗濯機、電磁弁のついた機器でよく起きます。跳ね上がる圧力は流速が毎秒一メートル変わるごとに、金属の管なら十気圧前後、やわらかい樹脂の管ならその三分の一ほどが目安です。工事では空気を閉じ込めた筒を付けて衝撃を吸わせ、大きな水力設備では専用のタンクで受け止めます。

勘違いしやすいところ

弁が壊れた音や空気が入った音と思われがちですが、水が止まりきれずに押し合う音です。水は縮まないと言われますがわずかには縮み、その縮みが圧力の波を運びます。強く閉めるほど激しくなるので、ゆっくり閉めるだけで軽くなります。もとは運動量保存で説明できる話です。

解説動画: 水槌ポンプ/宇宙のすべての知識 プリンシピア

弁が閉じた瞬間に圧力が跳ねる: はじめは排水弁が開き、揚水弁は閉じています。入力管に入った水は重力で流れ下って速さと運動エネルギーを増し、ついに自分で排水弁を閉じさせます。閉じた瞬間、入力管を流れていた水の運動量でポンプ内の圧力が上がる——これが水撃作用です。その圧力が揚水弁を押し開け、水の一部が揚水管と圧力容器へ流れ込みます。

空気のクッションが効率を決める: 圧力容器には空気が入っています。排水弁が閉じたときの急な圧力変化をこの空気が受け止め、そのぶん揚水管へ送り込める水が増えて、ポンプの効率が上がります。圧縮された空気が水を押し出すので、高い所へ送り続けられます。理論上は容器が無くても動きますが、効率は大幅に落ち、衝撃が繰り返しかかって寿命がずっと短くなります。

入力管は硬く、落差の何倍かで決める: 入力管の長さは、水源からポンプまでの高低差の5倍から12倍が最適とされます。材質は硬質塩ビ管や鉄管のように頑丈なものでないと、水撃で生まれたエネルギーが管をふくらませる方向へ逃げ、効率が大きく落ちます。この長さにすると1サイクルは1秒から2秒、効率はふつう60%、最高なら80%に届きます。

電気の要らないポンプとして: 動く部品は排水弁と揚水逆止弁の二つだけで、組み立ても修理も簡単です。水の運動エネルギーだけで動くのでエネルギー供給のインフラが無い僻地でも使えます。1772年、イギリスのジョン・ホワイトハーストが手動で制御する前身をつくり、水を4.9メートル持ち上げました。自立して動く形は1796年、フランスのジョゼフ・ミシェル・モンゴルフィエが製紙工場のために発明しています。

使ううちに出てくる困りごと: 圧力容器の空気は少しずつ水に溶けて減ります。水と空気の間に伸縮する膜を挟む、弁で泡を補うなどの対策のほか、自転車や自動車のタイヤのチューブに空気を詰めて入れる手もあり、世界中どこでも手に入るのが利点です。ほかに取水口の詰まり、空気不足によるノッキング、冬の凍結で揚水管が破裂、排水弁の打撃音にも注意が要ります。