キャビテーション
音と衝撃
水の中で圧力が下がってできる蒸気の泡
どんな現象?
水が速く流れて圧力の下がった場所に泡が急にわき、少し先で消える現象です。ポンプの羽根や船のスクリューの裏側に白いもやのように現れ、砂利が流れるような音と細かい振動を伴います。泡ひとつが生まれて潰れるまでは千分の一秒ほどで、目にはもやが居座っているようにしか見えません。
なぜ起きるか
水が蒸気になるのは温度が上がったときだけではなく、圧力が下がってもその温度のまま蒸気になれます。羽根の裏のように流れが速くて圧力の低い場所へ来た水は蒸気に変わり、泡が立ちます。泡が圧力の高い下流へ運ばれると周りの水が四方から押し込み、最後は片側から細い水の筋が突き抜けます。この筋が金属を叩くので表面が削られます。
どこで見られるか
船のスクリュー、ポンプ、水道の弁、水力機械の羽根で起きます。長く続くと虫食いのような穴が並び、部品を替えることになります。生きものではテッポウエビがはさみを閉じるときに泡を作り、潰れる衝撃で獲物を気絶させます。設計では通り道を広げ、圧力を下げすぎない形にして避けます。
勘違いしやすいところ
空気が水に溶けて泡になると思われがちですが、正体は水そのものの蒸気です。泡があること自体が壊すのではなく、潰れる瞬間の押し込みだけが壊します。潰れる泡が一瞬光ることもあり、その仕組みはまだ完全には説明できていません。圧力そのものの意味は圧力とは何かが近道です。
解説動画(海外・英語): Cavitation - Easily explained!/IET Institute for Energy Technology
蒸気圧を下回ると泡になる: キャビテーションは液体の中で蒸気の泡が急にできてすぐ潰れる現象で、その場の静圧が液体の蒸気圧より低くなった所で起きます。水の状態図では、絶対圧1バールのとき氷は0度でとけ、100度を超えると蒸発します。温度を上げる代わりに、温度を保ったまま圧力を蒸気圧より下げても同じことが起こる、という説明です。
圧力が下がる場所: 船のスクリューでは流れに向かう面は圧力が高く、反対側の面が低くなります。ポンプでは入口と細くなった配管がいちばん低く、とくに絞りの入口側の露出したふちです。太い断面も細い断面も同じ時間に同じ量が通るので、細い側は流れが速く静圧は低い。水温20度なら絶対圧2300パスカルを下回った所で水が蒸発します。
体積5万倍が一瞬で消える: その2300パスカルでは、同じ質量の水蒸気が液体のときの5万倍を超える体積を占めます。泡が蒸気圧より高い圧力の場所へ運ばれると、体積が5万分の1へ戻るように潰れます。だから潰れるたびに圧力の衝撃が出て、数が重なるとキャビテーション特有の耳で分かる音になります。動画の音は実験装置で録ったものです。
泡が潰れる4ミリ秒: 高速度撮影では、直径9ミリほどの泡が生まれて潰れるまでが実時間で4ミリ秒ほど。泡の壁から蒸気が液に戻りはじめ、表面はいちばん弱い所から崩れます。そこに生まれた細いマイクロジェットが泡を貫いて反対側の面へ突き刺さり、泡はリング状になってさらに壊れます。残るのは衝撃波とジェットです。
6か月・12か月・24か月: スイスのポンプメーカーが提供した羽根車の比較が出ます。6か月運転したものは車輪の中心付近が削られ、羽根はまだ無事。12か月では形が変わって流れ方まで変わり、羽根の上端から材料が欠けます。24か月では羽根が完全に無くなり、ポンプとして働きません。泡は水の通り道の断面も占めるので、送れる量も落ちます。