風切り音

音と衝撃

細い物のうしろで渦が並ぶときに出る音

どんな現象?

電線やアンテナ、自転車のスポークのような細い物に風が当たると、ヒューという高い音が出ます。風が強いほど高く、物が太いほど低く鳴り、太さが半分になると音の高さはおよそ倍になります。音が作られるのは物の前ではなく物のうしろ側で、風向きと直角の方向へよく届きます。

なぜ起きるか

細い物のうしろでは流れが表面からはがれ、渦が左右交互に離れていきます。片側で渦が離れるとその側の圧力が下がり、反対側の高いほうに押されて物は横へ動きます。次は逆側で同じことが起きるため、物が空気を押し返す向きも交互に入れ替わり、周りの空気は押されては戻されます。その繰り返しが波となって耳に届き、渦が離れる回数が音の高さになります。

どこで見られるか

台風の日の電線、車の屋根のアンテナ、ベランダの物干し、張ったロープ。太さ五ミリの線に秒速十メートルの風が当たると数百ヘルツほどで鳴り、同じ線でも風が強い日ほど高く聞こえます。渦の並びそのものはカルマン渦、離れる速さの目安はストローハル数で読み、太さと風速から高さを見積もれます。

勘違いしやすいところ

風が物に擦れる音だと思われがちですが、擦れているわけではありません。うしろで渦が規則正しく生まれることが音の正体です。電線が大きく揺れるのも音のせいではなく、交互の横向きの力が原因で、揺れやすい周期と渦の周期が合うと振れが育ちます。太い煙突ではらせん状の突起で渦の並びを崩します。

解説動画(海外・英語): Vortex Shedding in Air/Harvard Natural Sciences Lecture Demonstrations

渦が規則正しく離れる: 物体が空気の中を動くと、その後流に渦ができる。ただしどんな速さでもできるわけではなく、ある速さの範囲に入ったときだけ、渦が非常に規則正しい調子で次々に離れていく。この離れていく回数が、そのまま耳に届く音の高さになる、というのがこの装置の題材。

1ミリのピアノ線を引く: 装置は、張力をかけた直径1ミリの鋼のピアノ線を一定の速さで空気の中を動かすというもの。線は2本張ってあるが、これは装置を左右対称に保つためだと断ってある。速さは一段ずつ変えていき、そのたびに何が聞こえるかを見ていく。

線の倍音と合ったとき: 渦が離れて出る音は、もともとあまり大きくない。はっきり聞こえるのは、渦が離れる回数がその線が持つ高いほうの倍音のどれかと、たまたま一致したときだけ。速さを変えていくと、条件に合ったところで音が立ち上がるという形になる。

音が育つまでの間: 一致してもすぐには鳴らない。線が聞こえるだけの振幅で振れるようになるまでに時間がかかるので、次の速さに移してから音量が上がるまでに間がある。耳に届いているのは線そのものの振動だが、その高さは渦が離れる回数と同じになる。