大きな海流

海と川

地球をめぐる、帯のように細く速い流れ

どんな流れ?

幅100キロメートルほど、深さ数百メートルの帯が、海の中を決まった向きに流れ続けています。日本の南岸を東へ抜ける暖かい流れもその一つで、周囲よりはるかに速く、熱と栄養を遠くまで運びます。帯の外と中では水温も色も違い、数キロ進むだけで数度変わることもあります。運ぶ水の量は、世界中の川を合わせても及ばないほどです。

なぜ起きるか

海の上を吹き続ける風が海面をこすって水を引きずり、動き出した水は自転のせいで右へそれます。そらされた水は海の真ん中に寄り集まり、海面が数十センチから1メートルほど盛り上がる。盛り上がりを下ろうとする力と自転による曲がりがつり合うので、水は斜面を下らずに斜面に沿って回り続けます。西側だけ細く速くなるのは、自転の効きが緯度によって変わるからです。

どこで見られるか

衛星がとらえた海面水温の画像では、暖かい帯が舌のように伸びて見えます。流れの縁からは渦がちぎれて海に散らばり、そこにプランクトンと魚が集まるので好漁場になります。流路が南へ大きく外れる年単位の蛇行は水産や航路の話題として報じられ、沿岸の水温や漁のとれ高にも表れます。

危険と注意

位置は固定ではなく、年によって数十キロ動きます。小型の船で沖へ出ると、こいでも岸へ戻れない速さの帯に入り込むことがあります。岸辺の水が沖へ戻る波が砕けるところの流れとはまったく別物なので、同じ対処をあてはめないでください。出る前に海上保安庁が出す海流や海況の情報を確かめてください。

解説動画: 【高校地理】3-4. 海流と気候(海岸砂漠、エルニーニョ現象など) | 3. 世界の気候/地理を通して世界を知ろう!

覚えることは一つだけ: 海流の名前を一つずつ覚える必要はない、覚えるのは海流は風に吹かれて回っているの一行だけ、と動画は言う。味噌汁の表面に息を吹きかけると流れが見えるのと同じで、海面の水は貿易風と偏西風に押されて動く。赤道付近は東から西へ、大陸に当たって南北に分かれ、緯度が上がると偏西風に乗って西から東へ戻る。

黒潮と親潮、太平洋の8の字: こうして北半球は時計回り、南半球は反時計回りの循環になる。太平洋では北赤道海流と南赤道海流が西へ流れ、インドネシア付近で南北へ分かれる。日本へ来る暖流が黒潮(日本海流)、その先が北太平洋海流、北米沿いを南下する寒流がカリフォルニア海流。北にもう一つ小さな循環があるので全体は8の字になり、その上側で日本へ来る寒流が親潮(千島海流)。

水面の高さの差で流れる赤道反流: 北赤道海流と南赤道海流のあいだには、逆向きに西から東へ流れる赤道反流がある。風が直接押しているのではなく、赤道海流が海水を西側へ寄せるせいで西の海面が少し高くなり、高いほうから低いほうへ坂を下るように流れるもの。こうしてできる流れを傾斜流と呼ぶ。

湧昇流とエルニーニョ: ふだんのペルー沖では、暖かい表層の海水が貿易風で西へ運ばれるぶん、下から冷たい水が上がってくる。これが湧昇流で、プランクトンを海底から運んでくるのでイワシやアンチョビの漁が盛ん。貿易風が弱まると暖かい水が西へ十分に運ばれず湧昇流も弱まって、ペルー沖の水温が平年より高くなる。これがエルニーニョ現象で、漁獲も減る。

深いところの流れは千年かけて回る: ここまでは風で動く表層流で、深さは海面から数百mまで。もっと深いところの流れを動かしているのは風ではなく水温と塩分。グリーンランド付近で冷やされ、塩分も濃くなった海水は重くなって沈み、大西洋の底を這うように南下する。これが熱塩循環で、速さは秒速1cmほど、一周に千年から二千年かかるが、運ぶ海水とエネルギーの量が大きく、地球全体の気候に影響している。