魚の群れ
生きもの
先頭のいない群れが一斉に向きを変える
どんな流れ?
何千匹もの魚が体一つ分ほどの間隔を保ったまま、一つの塊のように動きます。向きを変えるときは一秒の何分の一かで端から端へ変化が走り、追われると隙間を詰めて球の形にまとまります。全体を指揮する先頭の一匹はおらず、抜けた個体の穴もすぐ埋まります。
なぜ起きるか
一匹ずつは近くの数匹だけを見て、ぶつからない距離と向きをそろえるという簡単な決まりで泳いでいます。それだけで全体の形はひとりでに決まります。流れの面では、尾が水を後ろへ押し、その反作用で体が前へ出ます。後ろに残る渦の列はカルマン渦と回る向きが逆で、水を後ろへ送り出す並びです。斜め後ろの魚がこれを利用できるという考えはありますが、省エネが主な理由かは未決着です。
どこで見られるか
漁港の岸壁、潮目、水族館の大水槽が見やすい場所です。外洋ではイワシが球になる場面が知られ、川ではアユが同じ向きで並びます。海面から見ていると、群れの通ったところだけ水の色が濃く見えるので、船の上からでも動きが追えます。時間帯は朝夕が濃くなります。
危険と注意
近づいて泳ぐときは、群れより先に自分の危険を考えてください。岸から沖へ向かう流れや船の通り道は、夢中になっているほど気づきません。波打ち際の流れについては波が砕けるところも見てください。遊泳禁止区域と潜水の可否は、自治体や漁協の掲示に従います。
解説動画(海外・英語): How do schools of fish swim in harmony? - Nathan S. Jacobs/TED-Ed
指揮している一匹はいない: サメをかわしながらよじれ、曲がり、避ける群れの動きは、示し合わせた協調に見えます。ではどの一匹が指揮しているのか。動画の答えは「誰でもないし、全員でもある」。群れは特定の魚に制御されておらず、正しいその場の決まりに従う魚がじゅうぶんな数そろえば、ひとりでに立ち上がります。
一匹が守る二つの決まり: 一匹一匹が見ているのは、サメとは何の関係もない二つの単純な決まりだけです。ひとつ、隣に近づきすぎず、離れすぎない。ふたつ、泳ぎ続ける。個体は目の前のやりとりに気を取られているのに、参加する数が増えると、個々の動きは群れという別の存在に覆われ、群れ独自のふるまいが現れます。
はぐれた魚から狙われる: 魚が集まるのは仲がよいからではなく生き残りの問題です。群れは捕食者から逃れる複雑な群れ方を見せますが、一匹だけになった魚はたやすい獲物としてすぐ選び出されます。同じことが海のあちこちで繰り返され、その結果として魚は確実に捕食を避けられている、という言い方をします。
分解すると消えてしまう: この種のしくみが厄介なのは、車のエンジンを分解するようにはいかないところです。ばらして見るのは理解の第一歩ではあるものの、群れを個体まで分けると捕食者を避ける力は失われ、調べる対象そのものが残りません。脳をニューロン一個まで分けたときも同じで、単体はあてにならないふるまいしか残りません。
同じ形は砂にも脳にも: 動画はこれを創発と呼び、要素が影響し合う複雑な系に共通の性質だとして例を並べます。何百万粒の砂がぶつかり転がるとほぼ同じ波の模様に落ち着く。大気で水分が凍ると水分子の結びつき方から放射状の格子ができて雪の結晶になる。脳でも単純な決まりに従うニューロンの活動がひとりでに秩序へまとまります。