鳥の編隊飛行
生きもの
前の鳥が残す上向きの風を借りる並び
どんな流れ?
ガンやハクチョウ、ツルがV字や斜めの一列をつくって飛ぶ並び方です。後ろの鳥は前の鳥の真後ろに入らず、斜め後ろへ少しずらしてつきます。上から見ると翼の先どうしが重なる位置で、先頭は何度も入れ替わります。渡りのように何百キロも続く飛行で目立ち、短い移動では現れません。
なぜ起きるか
翼は空気を下へ曲げ、その反作用で鳥が上へ押し上げられます。下へ送られた空気は翼の先で巻き上がって翼端渦になり、翼の外側では逆に上向きの流れが残ります。後ろの鳥がその上向きの空気に入ると、自分で押し下げる量が減り、同じ高さを保つのに要る羽ばたきが少なくて済みます。真後ろは下向きの流れなので、そこは避けます。羽ばたく間合いまで合わせる例も測られています。
どこで見られるか
秋から春の渡りの季節、朝夕に湖や干潟から飛び立つ時間がいちばん見やすくなります。数十羽の群れなら、V字の開き方が飛びながら変わるのも目で追えます。人の乗る航空機を並べて飛ばす試験でも燃料が減る効果が確かめられていて、使っている理屈は鳥と同じです。
危険と注意
災害の危険はありませんが、弱い立場にいるのは鳥のほうです。ねぐらに近づいて飛び立たせると、渡りに必要な体力をその場で削ります。撮影のための追い立てや低い高度のドローンは避け、望遠で距離をとってください。保護区の規則や鳥獣の保護に関する扱いは、自治体の窓口で確認できます。
解説動画: 鳥がV字編隊で飛ぶ本当の理由/Seeker
V字は形の一種にすぎない: 基本は先頭に1羽、その後ろの鳥が前の鳥の右か左にずれて並ぶ形。動画はV字のほかにJ字やV字を反転させた形も挙げ、どれも梯形陣形の一種、つまり直線状の並びだと整理する。この並びは鳥に限らず、紀元前4世紀にスパルタと戦った軍勢まで遡り、海戦にも空中戦にも使われてきた。
まず前がよく見える: 鳥も飛行機も船も人も、似た理由でこの形をとる。ひとつは、V字に並ぶと各メンバーが前方をはっきり見渡せること。もうひとつが省エネで、動画は場合によってはこの隊形のほうが移動に使うエネルギーが少なくて済む、と条件つきの言い方をしている。
ダウンウォッシュとアップウォッシュ: 鳥が羽ばたくと真後ろに空気の渦ができ、空気が下向きに押し下げられる。これがダウンウォッシュ。押された空気は後方や側面で上向きに戻り、こちらがアップウォッシュ。他の鳥のアップウォッシュの中に入った鳥はすでに上向きに押されているので、飛び続けるのに使う力が少なくて済む。
ペリカンの心拍を測った: V字では各個体が隣の鳥の後方かつ側面、つまりアップウォッシュの中に収まる。2001年、フランス国立科学研究センターの研究者がV字で飛ぶペリカンに心拍数モニターを取り付けたところ、後ろの個体ほど心拍が遅く、羽ばたきも少なかった。節約は鳥類全体で11〜14パーセント。
先頭だけが得をしない: 米国科学アカデミー紀要に載った別の研究では、群れは先頭の鳥が疲れすぎないよう配慮していた。先頭は集団のアップウォッシュから恩恵を受けられないためで、リーダーは交代で務める。ただし誰がリーダーになるかに階層があるのかは、科学者にもはっきり分かっていない。