イルカの泳ぎ
生きもの
流れているもの: 水
イルカの泳ぎは、尾びれで水を後ろへ送り波にも乗る泳ぎ。
どんな流れ?
尾びれを上下に振って進みます。魚が左右に振るのとは向きが違い、体を波打たせて水を後ろへ送ります。速い区間では時速三十から四十キロほど出て、ニュージーランド沖の野生のイルカを無人航空機で追った研究では秒速一から七メートルの範囲で泳ぎ、速いときほど受ける抵抗が急に小さくなっていました。船の前にできる波に乗るときはほとんど尾を振らずに同じ速さでついてきます。息を吸うため数十秒から数分おきに水面へ上がるのも泳ぎ方を決めています。
なぜ起きるか
尾びれは上げるときも下げるときも角度がつき、どちらの向きでも水を後ろへ押します。押された水は後ろ向きの勢いを受け取り、その反作用でイルカが前へ出ます。尾の後ろには渦の列が残り、まとめて後ろへ噴き出す水の筋になります。船の前の盛り上がった水面は前下がりの坂なので、そこにいると坂を滑るように進めます。アメリカの大学のチームがバンドウイルカに測定タグを付けて追った研究では、尾を振り続ける区間の速さは秒速二から五メートル、そのときの推進力は百から二千ワットまでばらつき、イルカが自分で選ぶ楽な速さではもっと遅く、尾を振っては滑る動きをくり返して力を抑えていました。「筋力が足りないのに速すぎる」という古い話は、流体の数値計算をした研究によって、抵抗と釣り合っているのは筋肉の出力そのものではなく、体をくねらせて生まれる推進力だという説明に変わっています。
どこで見られるか
外洋の船の船首、湾に入ってくる群れ、水族館のジャンプで見られます。同じ上下振りはドルフィンキックの渦としてヒトの泳ぎにも取り入れられました。クジラの尾も向きは同じで、深く潜る直前に尾を高く上げる姿で分かります。波に乗る個体は息継ぎの回数まで減ります。速く泳ぐ群れが跳びはねながら進む「ポーポイジング」も、時速十四キロを超えたあたりから増え、その間は抵抗がさらに17%ほど減ると分かっています。
危険と注意
野生の個体に触る、追う、餌をやることはしないでください。体が大きく歯もあり、人がけがをする事故が起きています。船で近づきすぎると群れを分断し、スクリューによる致命的な傷の原因にもなります。観察の距離や近づき方の決まりは、運航者と自治体の案内で確認してください。
出典
- 論文・英語 Bale R ほか(2014) Gray's paradox: a fluid mechanical perspective
- 論文・英語 Wang N ほか(2026) The cost of transition: investigating swimming biomechanics of bottlenose dolphins
- 論文・英語 Davis RW ほか(2024) Drag reduction and locomotory power in dolphins: Gray's paradox revealed