耐塩性乳酸菌(テトラジェノコッカス)

乳酸菌

塩分20%の中でも働ける

どんな菌?

醤油や味噌のもろみのような、塩分18〜20%を超える環境でも生きて働ける乳酸菌です。ふつうの乳酸菌はこの濃度では動けません。醤油の酸味と、香りの土台をつくる菌として知られます。

何をするか

もろみの中で糖を分解して乳酸を作り、pHを下げます。pHが下がることで腐敗菌が抑えられ、続いて耐塩性の酵母が働ける環境が整います。醤油の風味は、麹菌→この乳酸菌→耐塩性酵母、というリレーでできています。

好む環境

高い塩分(15〜20%以上)に耐え、常温で長い時間をかけて働きます。酸素はほとんど必要としません。

関わる食品

醤油、もろみ、味噌、魚醤。醤油の仕込みが「1年」と言われるのは、この遅い働きを待つ時間でもあります。

解説動画: 【醤油1】醤油の造り方 How to make soy sauce/くまさんの YouTube 農業大学

塩が微生物を選ぶ: 動画はまず塩の話から入ります。塩は浸透圧が高いので、近くにあると微生物の中の水分が外へ引き出されてしまう。そのため腐敗菌を含む多くの微生物は死んでしまいます。塩は防腐の力が高いのです。ところが、その塩がある環境でも動ける乳酸菌と酵母がいて、醤油づくりはこの菌たちに支えられているのだと続けます。

麹が酵素を用意する: 作り方は製麹と仕込みの二段階です。蒸した大豆と小麦に種麹をふりかけ、三日ほど培養すると醤油麹ができあがります。ここで麹菌(コウジカビ)が用意するのが二つの酵素で、デンプンを糖に変えるアミラーゼと、たんぱく質をアミノ酸に変えるプロテアーゼ。この二つの酵素が、あとの工程を丸ごと支えることになります。

もろみで麹菌は止まる: 醤油麹に食塩水と乳酸菌と酵母を加え、醸造タンクで一体にしたものがもろみ(醤油の実)です。ここで塩が効いて、麹菌そのものは活動を止めてしまいます。塩は腐敗を防ぐために欠かせませんが、その塩が麹菌自身も止めてしまうわけです。それでも先に作られた酵素は塩があっても働き続ける、と種明かしをします。

糖が酸味に変わる: 仕込みから一週間ほどで糖とアミノ酸がそろい、この糖が乳酸菌と酵母のエサになります。ここから二か月かけて発酵が進み、乳酸菌は糖から乳酸や酢酸を作って、醤油に酸味と奥行きを与えます。なめたときに塩気と一緒に感じる、あの酸味の出どころです。糖はアミノ酸と結びついて、あの赤黒い色も作ります。

香りへつなぐリレー: 最後は酵母の番です。同じ糖を餌にして、醤油特有の香り成分とアルコールを生み出します。動画はこの流れを微生物たちによるバトンリレーと呼び、麹菌が渡した糖を、乳酸菌と酵母が順に受け取っていくと整理します。塩に強い菌がそろって初めて成り立つ受け渡しで、このあと圧搾と火入れを経て瓶詰めの醤油になります。