麹菌(コウジカビ)

麹・カビ

麹菌(コウジカビ)は、味噌・醤油・日本酒・みりん・酢のすべてに関わり、2006年に日本醸造学会が「国菌」と認定したカビです。

どんな菌?

学名 Aspergillus oryzae。味噌・醤油・日本酒・みりん・酢のすべてに関わるカビの一種で、2006年に日本醸造学会が「国菌」として認定しました。蒸した米や麦、大豆の表面で菌糸を伸ばし、白い花のような姿になります。2005年に日本の研究チームがゲノムを解読したところ、遺伝子は12,074個あり、デンプンやたんぱく質を分解する分泌酵素の遺伝子が近縁のカビより多く増えていました。

何をするか

酵素を大量に作って外に出し、材料を分解するのが仕事です。アミラーゼがでんぷんをブドウ糖に、プロテアーゼがたんぱく質をアミノ酸に分解します。この「甘み」と「うま味」が、そのあとに来る酵母や乳酸菌の食べ物になります。麹菌自身はアルコールも酸も作りません。乾燥や塩漬けでカビそのものが死んでも、作った酵素は働き続けます。海外の発酵チャンネル「The Fermentation School」はそう説明しています。

好む環境

35℃前後を好みます。高温になりすぎると死に、低温では育ちません。酸素が必要な好気性なので、麹づくりでは途中で手入れをして空気を入れます。適した温度はおおむね30〜40℃で、44℃を超えると育てられなくなると、解説動画(Microbiology & Biotechnology)は説明しています。好むpHは5〜6程度で、pH2〜8の幅広い酸度でも発芽できるとされます。

関わる食品

味噌、醤油、日本酒、みりん、米酢、塩麹、甘酒に使われます。近縁の Aspergillus flavus はアフラトキシンという強い毒を作りますが、韓国の研究チームが遺伝子を比べたところ、両者は99.5%同じでも、麹菌では毒を作る遺伝子のまとまりが広い範囲で欠けていました。この違いを見分けるPCR検査も開発されています。米国FDAと世界保健機関(WHO)も、食品での麹菌の使用を安全と認めています。

出典

  1. 論文・英語 Machida M, Asai K, Sano M, Tanaka T, Kumagai T ほか(2005) Genome sequencing and analysis of Aspergillus oryzae
  2. 論文・英語 Daba GM, Mostafa FA, Elkhateeb WA(2021) The ancient koji mold (Aspergillus oryzae) as a modern biotechnological tool
  3. 論文・英語 Jeong E, Kwon YJ, Seo JA(2025) Distinction Between Aspergillus oryzae and Aflatoxigenic Aspergillus flavus by Rapid PCR Method Based on the Comparative Sequence Analysis of the Aflatoxin Biosynthesis Gene Cluster
  4. 動画・英語 The Fermentation School What is Koji? An Intro to the Mold Everyone is Talking About
  5. 動画・英語 Department of Microbiology & Biotechnology -TBAKCW Aspergillus oryzae

解説動画: 常温と60℃で作り比べた塩麹に見る麹菌の働き/発酵食大学

何を比べているか: 乾燥麹・塩・水だけで作る塩麹を、麹10・塩3・水13の同じ配合で二通りに仕込み、仕上がりを比べている。片方は常温に置いて毎日1回混ぜながら2週間、もう片方はヨーグルトメーカーで60℃・6時間。加温するほうは一晩で仕上がる。

温度で甘みが変わる理由: 加温したほうが甘く、コクも強く感じられた。60℃まで上げると麹のアミラーゼが働き、米のでんぷんをブドウ糖に変えるためだと説明している。常温のものは甘みが少なく塩味が立ち、すっきりした味わい。見た目も違い、常温は白っぽく、加温したほうはメイラード反応で黄色みが付く。

肉の柔らかさには差が出なかった: 同じ鶏胸肉に、それぞれの塩麹を肉の重さの10%で同じように揉み込み、同じフライパンで焼いて食べ比べている。常温のほうが酵素の力が強く残って柔らかくなるという予想だったが、柔らかさに差は感じられず、違いが出たのは加温したほうに感じるコクの深さだったとしており、あとは好みだとまとめている。

仕込み中の注意: 仕込んだ翌日は乾燥麹が水を吸って水分がぐっと減るが、慌てて水を足さない。塩分濃度が下がって腐敗のリスクが高まる。混ぜていれば2〜3日でまた水分が出てくる。麹が柔らかくふやけ、麹の香りに少し酒のような香りが混じってきたら仕上がり。気温が低い冬は1か月ほどかかる。