温度

温度

温度は、菌ごとに得意な温度帯が違うため、仕込みで働かせたい菌を選ぶ条件です。

なぜ効くか

温度が変わると、育つ菌の顔ぶれが変わります。カナダ・アルバータ大学のチームは、キャベツを2.5%の塩水に漬けて10℃と20℃で比べ、20℃ではラクチプランチバチルス属が、10℃ではロイコノストック属かラーネラ属が優勢のままだったと報告しています(30g規模の実験)。韓国の世界キムチ研究所も、キムチを4℃と10〜15℃で比べ、乳酸菌の顔ぶれが変わったと報告しています。

目安

目安の温度は、食べ物ごとに大きく違います。野菜の発酵は、バージニア工科大学の資料で約20〜22℃が最良、パンの一次発酵は27℃以下で指示されることが多く(ナオキパン)、麹甘酒の糖化は、醸造会社のOguroらの実験でブドウ糖が50℃を100%として、40℃で66.4%、60℃で91.9%、70℃で76.6%でした(実験室の値)。

外れたときの症状

高すぎると、腐敗菌が優勢になって野菜が軟らかくなることがあります(バージニア工科大学)。低すぎると、ザワークラウトは60°F(約16℃)未満で発酵しないことがあります。ナオキパン(YouTube)は、酵母の量で発酵時間をそろえた150gの食パン生地では、一次発酵が27℃でも38℃でも焼き上がりにほとんど差が出なかった一方、お店の量のような大きな塊は中心まで温まるのに時間がかかり、表面だけ先に進むと説明しています。

出典

  1. 公的機関・英語 Eifert JA, Boyer RR, Williams RC(Virginia Tech)(2025) Vegetable Fermentation
  2. 論文・英語 Qiao N, Gänzle MG(University of Alberta)(2026) From phyllosphere to fermentation: Impact of fermentation scale and temperature on sauerkraut fermentation
  3. 論文・英語 Jung S, Hwang IM, Lee JH(World Institute of Kimchi)(2024) Temperature impact on microbial and metabolic profiles in kimchi fermentation
  4. 論文・英語 Oguro Y, Nakamura A, Kurahashi A(Hakkaisan Brewery)(2019) Effect of temperature on saccharification and oligosaccharide production efficiency in koji amazake
  5. 動画 パン作り研究家 ナオキパン 一次発酵って38℃じゃダメなの?適温発酵VS高温発酵で比較してみた

解説動画: パンのベンチタイムは時間より温度と生地の状態で決める/パン作り研究家 ナオキパン

レシピの「室温」は何度か: レシピに「室温で20分休ませる」と書かれているときの室温は25〜27℃が暗黙の前提だと説明している。この温度が保たれていれば、時間通りに休ませるだけでもおおむね失敗しない。ベンチタイムも発酵工程の一つなので、冬場など部屋が寒いと生地の温度も下がり、発酵が遅れて指定の時間では足りなくなる。寒い時期は室温ではなく暖かい場所に置くよう勧めている。

見極めのコツ: 温度が変われば緩むまでの時間も変わるので、目的は生地を休ませることではなく緩ませることだとしている。時間通りに置いても緩んでいなければ意味がない。丸めた直後に指で触って弾力と肌触りを覚えておき、大きさが1.5倍ほどに膨らんだか、表面が丸めた直後よりさらっとしてきたか、弾力が落ち着いて持つとふわっと軽いかで判断する。発酵が進むと生地の表面がさらっとしてくるのは、どの発酵にも共通する変化だという。

やりがちなミス: 5分しか休ませていない生地を実際に成形して見せている。弾力が強すぎて生地が伸びず、無理に伸ばそうとすると縮む。あんパンのように具を包むものだと包める量が大幅に減り、発酵中や焼成中に綴じ目が開いて中身が噴き出すことにもなる。逆に10分20分延ばしても、よほど暑い部屋でなければ発酵過多にはなりにくいので、足りないと思ったら思い切って延長するよう勧めている。