酸素(好気と嫌気)

容器と衛生

酸素(好気と嫌気)は、空気を入れるか遮断するかで、酸素を使う菌と酸素を嫌う菌のどちらを優位にするかを決める条件です。

なぜ効くか

酸素を使って増える菌(好気性)と、酸素があると増えられない菌(嫌気性)がいます。2026年の総説では、乳酸菌は酸素の有無を問わず増える通性嫌気性で、酸素で呼吸できる可能性のある種もあり、酢酸菌は酸素が要る絶対好気性と整理されています。容器の形とふたの扱いは、どちらの菌を優位にするかの選択です。漬物と酢でふたの扱いが逆になるのは、この違いが背景にあります。

目安

漬物は野菜を漬け汁の下に沈めます。バージニア工科大学の解説は、沈めると酸素のない状態が保たれて乳酸菌に有利になり、空気のある環境では酵母・カビ・腐敗菌が育つと説明しています。ペンシルベニア州立大学の解説は、発酵ガスが逃げるよう、ふたをゆるくするか清潔な布をかけるとしています。酢は口の広い容器に布をかけ、酸素が要る酢酸菌に空気を届けます。

外れたときの症状

世界キムチ研究所(韓国)のチームは、キムチを4〜5℃で90日置き、空気を通す膜の包装を、密閉や一方向弁の包装と比べました。空気を通した包装は、酵母とカビが早く増え、pHが高く、官能評価も低くなりました。最も注意が要るのは、酸素がなく酸性でもない環境。オレゴン州立大の解説は、低酸性の食品を油に漬けると酸素のない環境になりボツリヌス菌が増えうるとして、冷蔵で4日以内か冷凍を勧め、CDCは毒素を見た目・におい・味で見分けられないとしています。

出典

  1. 公的機関・英語 Eifert JA, Boyer RR, Williams RC, Virginia Tech(2020) Vegetable Fermentation
  2. 公的機関・英語 Zepp M, Hirneisen A, LaBorde L, Penn State Extension(2023) Let's Preserve: Fermentation - Sauerkraut and Pickles
  3. 論文・英語 Yu HJ, Park SH, Kim EH, Choi Y-J, Min SG(2023) Effect of headspace gas composition in kimchi packaging on the quality characteristics of kimchi
  4. 論文・英語 Głodo W, Śliżewska K(2026) Acetic Acid Bacteria: Metabolic Potential, Technological Applications and Emerging Probiotic Functions
  5. 論文・英語 Abrashev R, Krumova E, Atanasova N, Dobreva L, Angelova M, Danova S(2026) Antioxidant Potential of Probiotics and Postbiotics Derived from Lactic Acid Bacteria and Their Impact on Foods
  6. 公的機関・英語 Raab C, Woodburn M, OSU Extension Service(2025) Herbs and vegetables in oil
  7. 公的機関・英語 Centers for Disease Control and Prevention(2024) Home-Canned Foods | Botulism

解説動画: ぬか床を毎日混ぜるのは空気の状態を入れ替えるため/はやかわ あきよ【 腸活と発酵食の先生 】

なぜ毎日混ぜるのか: 発酵食の講師が、ぬか床を毎日混ぜる理由を空気(酸素)と温度の二つに整理している。ぬか床では乳酸菌・酵母菌・酪酸菌が互いに絡み合って共生していて、どれか一つの菌にだけ都合の良い環境が続くと、その菌ばかりが強くなって他が弱ってしまう。三つがバランスよく活動できる環境を作るための作業が、毎日混ぜることだと説明している。

好気性と嫌気性: 菌は空気を好む好気性と、空気を嫌う(薄いところを好む)嫌気性に大きく分かれる。ぬか床の中の微生物は全部が同じ性質ではないので、空気がたくさんある状態も、薄い状態も、まったくない状態も、どれも必要になる。だから一定の状態に保つのではなく、混ぜて空気のある時間帯とない時間帯を作り替えるのが目的だとしている。

混ぜないとどうなるか: 週に1回や月に1回しか混ぜないと、空気のない状態が続いて特定の菌だけが突出する。例として、酵母菌ばかりが活発になるとアルコール発酵が進み、ぬか床からアルコール臭がしてくることを挙げている。変な匂いがすると腐ったと思って捨ててしまう人がいるが、菌の性質を知っていれば、手入れで対処して長く付き合えるという立場をとっている。