形と明暗を、時間をかけて描く。
デッサンは、1つのモチーフを時間をかけて描き、形と明暗を何度も見比べて合わせていく1枚になる。始める前に決めるのは、モチーフ・光源・自分の立つ位置の3つ。光源は1つにし、途中で動かさない。イーゼルをモチーフのすぐ横に立て、モチーフと画面が並んで見える位置まで下がって、床に印を付ける。描くのは画面の前、比べるのは印の位置と決めて往復する。モチーフ・画面・立つ位置のどれかが動くと、大きさも見える角度も変わってしまう(ウィリアムズタウン美術保存センター)。
描く順は、大きな形、明暗の境目、影の塊、細部になる。光の側と影の側の境目は、面が光源から背を向け始める直前にできる(Proko)。この境目を先に薄く引き、影の側をまとめて塗ってシャドウの塊を作る。影の中は真っ黒にしない。周りから跳ね返った光で少し明るくなり、境目のすぐ内側に、いちばん濃い帯が出ることもある。鉛筆の線は面の向きに沿わせ、平らな面ならまっすぐ、丸い面なら回り込む向きに重ねる。先をとがらせて立てれば細い線、寝かせれば太い線で広く塗れる(Studio HANE)。ハイライトは光源の映り込みなので、見る位置が動けば場所も動く。光に正面から向いた面の明るさとは分けて扱う(Proko)。
題材が頭と顔なら、頭蓋を奥行きのある丸でとり、両側を薄く切り落とし、顎を三角形で付ける(Studio HANE)。まっすぐ前を向いた顔では、眉の線が丸のほぼ中央に来る。髪の生え際から眉、眉から鼻の下、鼻の下から顎先までは、ほぼ同じ長さの3区間に分かれ、耳は真ん中の区間に収まる。上や下を向くと、手前の区間が長く、奥の区間が短く見える(Proko)。目の高さは、頭頂から顎先までのほぼ中ほどにある(Smith ら 2021 が引く人体計測)。正面から見て頭の横幅を5つに割り、2つ目と4つ目に目を入れると、目が大きくなりすぎない(Studio HANE)。
いちばん起きやすい狂いは、目を高く置きすぎることだ。3〜5歳の子どもから大人まで124人に、発泡素材の顔へ目と口を置き直させた実験でも、目だけが実物より上に置かれた。手先の器用さではなく、見て判断する段で起きる偏りと著者たちはみている(Smith ら 2021)。顔や家を描かせた別の実験では、学校で描画を習った人でも目の位置の誤りは小さくならず、目は写真より大きく描かれた(Harrison ら 2017)。防ぐ手は、目を描く前に頭頂と顎先の中点へ横線を1本引き、目をその線にのせること。脳の収まる頭の部分を、目鼻口より大きく取ることも忘れない。両目の端と口を結んだ三角形の形をモデルで確かめると、顔の向きと個人差がつかめる(Studio HANE)。
やりがちな失敗は3つある。目や鼻から描き始めて1か所だけ仕上げると、あとで大きな形がずれても直せない。影を一様に黒く塗り込むと、明暗法の立体が平らになる。印を決めずに立つ位置を変えると、測った長さが合わなくなる。できあがりは、離れて見ると光の側と影の側が2つの塊にまとまり、近寄ると影の中に跳ね返りの明るさが段階で残る1枚になる。コントラストを強めるのは、その2つがそろってからでよい。1枚目は習作と割り切り、同じモチーフをもう一度描く。
出典
- 動画 Studio HANE(画家・吉田崇悟) なるほど!そういう事か!参考書の「頭」「顔」の描き方【みんなで絵の勉強】絵画教室で教える絵の描き方@StudioHANE
- 動画・英語 Proko How to Draw the Head - Front View
- 動画・英語 Proko Shading Light and Form - Basics
- 資料・英語 Simeon Youngmann(ウィリアムズタウン美術保存センター『Art Conservator』) Objective Life Drawing: Two Methods of Seeing
- 論文・英語 Smith K, Kempe V, Wood L(2021) Eye Placement Bias Is Remarkably Robust
- 論文・英語 Harrison NR, Jones J, Davies SJ(2017) Systematic Distortions in Vertical Placement of Features in Drawings of Faces and Houses






