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形と明暗を、時間をかけて描く。

デッサンは、1つのモチーフを時間をかけて描き、形と明暗を何度も見比べて合わせていく1枚になる。始める前に決めるのは、モチーフ・光源・自分の立つ位置の3つ。光源は1つにし、途中で動かさない。イーゼルをモチーフのすぐ横に立て、モチーフと画面が並んで見える位置まで下がって、床に印を付ける。描くのは画面の前、比べるのは印の位置と決めて往復する。モチーフ・画面・立つ位置のどれかが動くと、大きさも見える角度も変わってしまう(ウィリアムズタウン美術保存センター)。

モチーフ
モチーフ写真: Paul Cézanne / Public domain
イーゼル写真: Marie-Gabrielle Capet / Public domain

描く順は、大きな形、明暗の境目、影の塊、細部になる。光の側と影の側の境目は、面が光源から背を向け始める直前にできる(Proko)。この境目を先に薄く引き、影の側をまとめて塗ってシャドウの塊を作る。影の中は真っ黒にしない。周りから跳ね返った光で少し明るくなり、境目のすぐ内側に、いちばん濃い帯が出ることもある。鉛筆の線は面の向きに沿わせ、平らな面ならまっすぐ、丸い面なら回り込む向きに重ねる。先をとがらせて立てれば細い線、寝かせれば太い線で広く塗れる(Studio HANE)。ハイライトは光源の映り込みなので、見る位置が動けば場所も動く。光に正面から向いた面の明るさとは分けて扱う(Proko)。

シャドウ
シャドウ写真: Jill Diefenbach / CC BY-SA 4.0
ハイライト
ハイライト写真: Davi.trip / CC BY-SA 4.0

題材が頭と顔なら、頭蓋を奥行きのある丸でとり、両側を薄く切り落とし、顎を三角形で付ける(Studio HANE)。まっすぐ前を向いた顔では、眉の線が丸のほぼ中央に来る。髪の生え際から眉、眉から鼻の下、鼻の下から顎先までは、ほぼ同じ長さの3区間に分かれ、耳は真ん中の区間に収まる。上や下を向くと、手前の区間が長く、奥の区間が短く見える(Proko)。目の高さは、頭頂から顎先までのほぼ中ほどにある(Smith ら 2021 が引く人体計測)。正面から見て頭の横幅を5つに割り、2つ目と4つ目に目を入れると、目が大きくなりすぎない(Studio HANE)。

いちばん起きやすい狂いは、目を高く置きすぎることだ。3〜5歳の子どもから大人まで124人に、発泡素材の顔へ目と口を置き直させた実験でも、目だけが実物より上に置かれた。手先の器用さではなく、見て判断する段で起きる偏りと著者たちはみている(Smith ら 2021)。顔や家を描かせた別の実験では、学校で描画を習った人でも目の位置の誤りは小さくならず、目は写真より大きく描かれた(Harrison ら 2017)。防ぐ手は、目を描く前に頭頂と顎先の中点へ横線を1本引き、目をその線にのせること。脳の収まる頭の部分を、目鼻口より大きく取ることも忘れない。両目の端と口を結んだ三角形の形をモデルで確かめると、顔の向きと個人差がつかめる(Studio HANE)。

やりがちな失敗は3つある。目や鼻から描き始めて1か所だけ仕上げると、あとで大きな形がずれても直せない。影を一様に黒く塗り込むと、明暗法の立体が平らになる。印を決めずに立つ位置を変えると、測った長さが合わなくなる。できあがりは、離れて見ると光の側と影の側が2つの塊にまとまり、近寄ると影の中に跳ね返りの明るさが段階で残る1枚になる。コントラストを強めるのは、その2つがそろってからでよい。1枚目は習作と割り切り、同じモチーフをもう一度描く。

明暗法
明暗法写真: Georges de La Tour / Public domain
コントラスト
コントラスト写真: Duschan 1944 Nutzungsberechtigter Erbe derivative work: MagentaGreen / CC BY-SA 4.0
習作
習作写真: Georges Seurat / Public domain

出典

  1. 動画 Studio HANE(画家・吉田崇悟) なるほど!そういう事か!参考書の「頭」「顔」の描き方【みんなで絵の勉強】絵画教室で教える絵の描き方@StudioHANE
  2. 動画・英語 Proko How to Draw the Head - Front View
  3. 動画・英語 Proko Shading Light and Form - Basics
  4. 資料・英語 Simeon Youngmann(ウィリアムズタウン美術保存センター『Art Conservator』) Objective Life Drawing: Two Methods of Seeing
  5. 論文・英語 Smith K, Kempe V, Wood L(2021) Eye Placement Bias Is Remarkably Robust
  6. 論文・英語 Harrison NR, Jones J, Davies SJ(2017) Systematic Distortions in Vertical Placement of Features in Drawings of Faces and Houses